決着

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決着

 「頼むよ爺さん! 俺が勝っても願いはなしでいいから、雪を降らしてくれよ……」  「無理」  2文字で希望を打ち砕かれる。  もう終わった……。      日がほとんど沈んだ。  残り1分あるだろうか。  「どうした? もうなす術なしか?」  「……」      日が完全に沈んだ。  「勝った。 勝ったぞー!! 悪いな若ぞう」    「…………」  「気分が良いわい。勝利の雪でも降らそうか」  雪が降る。それも強く。  皮肉だ。    「ではこの契約書通り、ワシの願い……」  その瞬間契約書が燃え出した。  「何故じゃ! ワシは勝ったはずじゃ!」    「悪いねー爺さん。俺の勝ちみたいだ。俺はあんたと違って、ゲームを楽しみたい派なんだよ。楽しかったよ」  「どう言うことじゃ! 何が起きている!」  「簡単だよ、あんたが雪を降らしてくれたからその写真を撮っただけ。それが勝利条件だろ。そうしたまでだよ」    「何を言っている! ワシは日没を確認してから雪を降らしたぞ!」  「東京では、確かに日は沈んでいたな」    「なに!?」  「言っただろ、友達と3人で挑むと」  「しかし北海道の雪は日が沈むまで、止めていた」    「北海道ではそうかもな。しかし、友達が2人とも北海道にいるなんて言ったか? 1人は北海道だが、もう1人は沖縄だよ」  「なに!? しかし、沖縄でこの時期に雪が降るわけがない!」  「今あんたが降らしたじゃん」  「それは、何度も言っておるが、日が沈んだあと……、あっ」  「やっと気づいたか。そう、沖縄ではまだ、日が沈んでいない。確かに日本には時差はないが、東京と沖縄では日が沈む時間には、40分程度の差がある」  「ワシの負けなのか……」  「悪いね、どうしても勝ちたかったんだよ」  
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