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「雅さんは、義隆の今カノと会ったことあるんだよね?どんな子なの?」
「うーん、なんか・・・嘘くさいというか、全部作ってるみたいというか・・・まぁ、分かりやすく言うと、ぶりっ子かな」
「・・・ぶりっ子か。意外だな、そんなのが良いのか」
「顔は可愛いんだけどね」
〝顔は可愛い〟という雅の言葉を聞いて、やっぱり義隆は外見で女の子を選んでいるのだと思った。義隆の付き合った女の子は、自分と美々以外知らないが、二人ともぶりっ子というタイプではない。梢は付き合っていた当時どちらかというと大人しいタイプだったし、美々は人に媚びたりせずに自分の意見を突き通す子だった。義隆が今まで付き合った子の性格のタイプは統一性がなくバラバラだ。これはきっと、梢以外は外見が好みかどうかで付き合っているということだろう。
「付き合っている当時は、外見なんか関係なく、私の中身を・・・私自身を好きでいてくれてると思ってたんだけどな。結局顔なのかな、義隆は」
「まぁ、人は見た目が九割って言うからね。実際梢ちゃんも、痩せてからめちゃくちゃモテてるでしょ?」
「・・・うん、まぁ、多少は」
「いいじゃん、その美貌で義隆を翻弄してやりなよ」
本当は義隆だけは他の人と違うと思いたかった。ブスでも美人でも外見なんて関係なく、梢自身のことを純粋に好きになってくれたと信じたかった。
実際、付き合っていた当時は「そのままの梢が好きだから」と言ってくれた。梢は何故か、何年経ってもその義隆の言葉を心のどこかで信じたいと思っていた。あんな風に無様に振られて、学校一の美女に取られたというのに。
結局、私はあの頃から前に進めていないんだな。
久々に昔の話をして、自分がいかに義隆に執着しているのか改めて気付く。それと同時に、息苦しくなる。
「梢ちゃん、とりあえず、ライバルに会ってみれば?」
「え?ライバルって・・・義隆の彼女に?」
「うん!ちょうど来週の日曜日に、この店の三周年記念パーティーをやるの。お店貸切にして常連さんだけで。そのパーティーに、義隆と義隆の彼女を招待するから、梢ちゃんも来れば良いんだよ!」
雅は、「名案でしょ!」と自信満々に笑う。しかし梢は外見は綺麗に変わったかも知れないが人見知りな性格はそのままなので、パーティーに参加するというだけで気が引けた。
それに雅には言ってないが、梢と義隆はカラオケ店で濃厚なキスをした後、ちゃんと顔を合わせて無かった。
『少し時間が欲しい。気持ちの整理が付いたら必ず連絡する』
あの後義隆からはそんなメッセージが届いて、それから音沙汰が無かった。
そんな最中、お店のパーティーに参加をして無理矢理顔を合わせたら、嫌われてしまうのではないか。
「よし、じゃあ決まり!来週は思いっきり可愛い格好しておいで!義隆の彼女に宣戦布告しよ!」
しかし何故か妙にやる気満々の雅に、梢はもはや何も言えなくなってしまった。結局そのまま押し切られてしまい、梢は来週のパーティーに参加することになった。
梢は不安だらけだったが、義隆の今の彼女を知る良い機会だと割り切ることにした。
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