彼の本音

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彼の本音

パーティーがあった日から、茂晴は梢に毎日のように連絡をくれるようになった。何気ないメッセージのやりとりをして、時々電話もくれた。梢の負担にならないようにと気にかけてくれていたりもして、そんな茂晴に救われている梢がいた。 「出会ってその日に付き合って欲しいとか、そいつ、チャラくない?気を付けた方がいいよ」 姉の楓はそう言って、茂晴のことはあまり賛成では無いようだった。「私はやっぱり義隆派だから」と、相変わらず義隆とヨリを戻すことに期待していた。 しかし肝心の義隆からは、この映画面白いよとか、この曲めちゃくちゃ良いから聴いてみてなど、雑談ばかり届いていて、肝心なことが何も聞けてなかった。義隆はこのまま梢友達に戻ろうとしているのか、くだらないメッセージのやり取りだけしてきて、会うことも二人の関係の核心に触れることもしてこない。アリスの話すら一切してこないし、少し質問してもはぐらかされてしまう。梢はこの距離感をどうやって詰めれば良いのか、悩んでいた。 そんな時、茂晴から食事の誘いがあった。直接会ってもっと話がしたいと、ストレートに誘われた。義隆のことで少し疲れていた梢は気晴らしになるかも知れないと、雅の店なら会っても良いと答えた。何となく二人きりで会うのは気が引けたが、仕事をしながらでも雅が居てくれれば大丈夫な気がしたのだ。 「梢ちゃん、いらっしゃい」 店に着くと、雅がいつものように温かく迎えてくれた。花のような笑顔に、ほっとする。 「・・・あれから、義隆とどう?」 自分からパーティーに来るように誘ったので、雅はその後を気にしているようだった。そういえばあのパーティー以来、この店には顔を出してなかった。 「・・・あれから全然会ってないんだ。連絡はちょこちょこくれるんだけど、くだらない雑談ばっかで」 「なるほどねぇ」 「もう友達以上にはなれないのかも・・・諦めた方が良いかもしれない」 梢は思わず、弱音を吐いてしまった。 せっかく綺麗になって、義隆と再会したのに、なかなか思い通りに行かない関係に苦しくなっていたのだ。当初の予定では義隆をすんなり虜にして、好き勝手に振り回してやるつもりだった。しかし振り回されているのはむしろ梢の方で、会えない間にも想いを募らせてしまい、義隆のことが頭から離れなくなっていた。 「でも義隆、アリスと一緒にいながらも、梢ちゃんのことめちゃくちゃ気にしてたけどね」 「え?!本当に?!」 「うん。シゲさんと一緒にいるの、不機嫌そうに見てたよ。自分で頼んだくせにね?だから義隆は梢ちゃんのこと、本当に大事なんだなって思ったんだよね」 雅の話に思わず頬が緩みそうになる。 義隆が自分のことを気にしていた・・・そんな事実が飛び上がるほど嬉しかった。彼女が隣にいながら自分を気にしてるなんて、もしかしたら勝算があるかも知れない。数日間沈みっぱなしだった気持ちが軽やかになっていくのを感じた。 「梢ちゃん、お待たせ」 雅としばらく話し込んでいると、茂晴がやって来た。雅から義隆の話を聞いて気持ちが舞い上がってしまい、何故ここに来たのかを忘れるところだった。
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