例え代わりでも

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「・・・・・・・・・」 義隆はそんなアリスの言葉に、何も言えずにいた。まさかこんな風に告白してもらえるなんて、思っていなかったからだ。 「・・・やっぱり迷惑かな、こーゆーの」 何も言ってくれない義隆に痺れを切らせて、アリスは恐る恐る口を開く。それと同時に傷付く準備もした。何を言われても笑っていられるようにと、気持ちをぐっと引き締める。 「そんな事ないよ、ありがとう。嬉しかったよ。でも・・・」 「でも・・・?」 「なんで俺なの?正直、大谷さんならわざわざ俺なんかと付き合わなくても、いっぱい相手いるでしょ?」 義隆は驚いたと同時に、少し困っているようだった。正直なんて答えて良いか分からないのだろう。それでもアリスの気持ちを、逃げずに正面から受け止めようとしてくれているようだった。そんな誠実な所が、ますます好きだと思った。 「・・・私のこと、可愛いって一回も言ったことないから」 「・・・何それ、普通は女の子って可愛いって言われたいんじゃないの?」 「外見だけ見て、可愛いって近付いてくる人は信用出来ない。でも叶さんは違うでしょ?きっとあの時、水をかけられたのが私じゃなくても声をかけてたでしょ?強いて言うなら、そーゆー所が好きかな」 「・・・美人もなかなか大変なんだね。でも俺は大谷さんが思ってるような奴じゃないよ。きっともっと臆病で最低な奴だよ?だから、俺なんかやめときな」 義隆はまた苦笑いをして、アリスと距離を取ろうとする。でもここで引き下がるようなアリスでは無い。どんな義隆でも受け止めると決めたのだ。 「そうやってガチガチに考えなくていいんじゃない?」 「え?」 「とりあえず私と付き合ってみて、元カノを忘れる為の一歩、踏み出してみなよ。私を利用してみればいいじゃない」 「でも・・・そんなの大谷さんに失礼なんじゃ・・・」 「失礼じゃないよ。全然いい」 アリスはそう言うと、震える手でそっと義隆の手を握り、泣きそうな目で見つめる。 「私と新しい一歩、踏み出してみよ?ね?」 義隆は何故だかその手を振りほどくことが出来なかった。 自分から離れたくせに、梢のことがいつまでも忘れられないことにいい加減、嫌気が差していた。アリスならこんな自分を変えてくれるかも知れない、当時はそんな希望もあって、悩みながらも付き合い始めたのだった。 あれから二年。 アリスはどんな時も、傍に居てくれた。 時には素直になれずに、強い口調になってしまう所もあるが、本当は純粋で優しいアリス。そんな彼女を、守ってあげたいと思っていた。敵を作りやすい彼女だからこそ、自分だけはいつまでも味方でいたいと思っていた・・・はずだった。 あの時、驚く程綺麗になった梢と再会するまでは。 梢を久しぶりに見た瞬間、胸が高鳴ってしまった。忘れなくても忘れられなかった、苦しいぐらいに愛おしいと思っていた相手が、さらに魅力的になってそこに立っていたのだ。 同時に自分が別れる時に、綺麗な美々に好かれて嬉しかったと言ったことを思い出す。梢のことを最大限に傷付ける言葉を選んで、心を鬼にして言ったことが、まさかこんな形で返ってくるとは思ってもみなかった。見事にギャフンと言わされてしまった。 しかし義隆はそんな心の内を絶対に知られたくないと思い、必死で平然を装っていた。
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