呪縛と執着

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「私が・・・私が別れた時どんなに辛かったか分かる?五年間、どんな気持ちだったか・・・」 「本当にごめん。俺が弱虫で、梢から卑怯な手を使って逃げたせいで・・・すごく傷付けた。本当に申し訳ないと思ってる」 「私は・・・自分がブスだから振られたんだと思って、めちゃくちゃ傷付いた。そのままが好きだって言ったくせに、結局綺麗な子を選ぶんだって思って。義隆の嘘つき、大嫌いって思って・・・」 そこまで話した所で、梢は言葉を詰まらせる。そして嗚咽を漏らしながら、必死に続ける。顔はすでに、涙でぐしゃぐしゃになっていた。 「それなのに・・・嫌いって思ったはずなのに、忘れならなくて・・・もしかしたら、綺麗になったら、もう一回好きになってくれるかも知れないって思って」 「それで、こんなに綺麗になったの?俺のために?」 「・・・ちがう、自分のため。義隆を見返すために綺麗になったの」 そこまで梢が言うと、義隆は思いっきり抱き締めた。目を真っ赤にして泣く梢は、まるで小さなうさぎのようだった。これからは自分がもう二度と傷付かないように、大切に守って生きたいと素直に思えた。一度離れたのにこうしてまた出逢えて、惹かれあったのは、きっと梢が自分の運命の相手だからだと強く信じることが出来た。 「・・・見返すこと出来たよ、バッチリ。正直、再会した時、どうしようかと思った。なんて言うか、反撃されたというか、逆襲にあったというか・・・やられたなって思った。それくらい、やばかった。梢を振ったことずっと後悔してたけど、綺麗になった梢を見て・・・後悔が増した」 「・・・結局外見なの?」 「いや、梢のことは外見がどうこうじゃなくて、好きだったんだけどさ。+‪αの破壊力が凄かったというか」 「ふーん」 梢はやっと義隆の素直な気持ちを全部聞けた気がして、嬉しかった。そしてどんなにみっともなくて弱い部分を見せられても、自分が五年前に傷付けられたのは、義隆の弱さから来た身勝手な理由だったと知っても、どうしても嫌いになれなかった。 こんなに色々あったのに、まだ義隆のことを愛おしいなんて、むしろダメな義隆を見て愛おしさが増すなんて、本当に自分はどうかしていると思った。 「随分・・・遠回りしたけど。しょうがないから、また一緒にいてあげる」 それが梢の出した答えだった。 あんな酷い別れ方をしたのに、二人とも別れたことを後悔していて。そしてまた再会して、強く惹かれあった。これはもう神様が一緒に居ろと言ってるような気がした。 少し不器用で実は似た者同士な二人は、ようやく新しい一歩を踏み出したのだった。
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