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くる、くる、くる。
正直、完全に気休め程度というか、話したところでなんの解決にもならないかもしれないんだけど。それでもそろそろ俺も限界だから、聞いてくれたら嬉しい。ひょっとしたら、これが俺の遺言になるかもしれないから尚更に。
今からこのブログに書くのは、ある絵の話だ。
俺の画力がたかが知れたレベルだっていうのは、ブログの読者のみんなは知っていると思うんだけど。これでも一応、一時期はマジで絵の道を目指してみようと思ってた時期があったのね。イラストレーターじゃなくて、硬派に油絵とかそういう方向。
俺の叔母さんの趣味が油絵でさ。すっごく絵を描くのが上手くて、従兄弟の家に行くたびに見せてもらっていたっていうのが最大の理由かな。いやほんと、アマチュアにしとくのがもったいないって思うくらい上手かったの。林檎とか葡萄とか家とかの無機物だけじゃなくて、ばあちゃんの絵とか母さんの絵とかも結構描いて見せてくれてね。子供心に俺、自分もそういう絵が描けるようになったら嬉しいなーって思って。
だからまあ単純なんだけど、中学高校では美術部に入ってた。
中学の美術部はほとんど名前ばかりの部活で予算もなかったから、本格的に油絵ができるようになったのは高校からだった。高校の美術部はそこそこ盛んで、美術の学校きっちり出て勉強した顧問の先生が熱心に指導してくれたし、油絵の道具も予算で全員分買い揃えてくれたさ。至れり尽せりだったのね。先輩の中には、コンクールで入賞したような人もいた。俺もそうなりたいなーって思いながら、毎日一生懸命絵を描いてたんだよ。
で、ここからが本題。
美術部だから、引退も遅くて。俺は三年の半ばくらいまで在籍して絵を描いてたんだけど――その三年生の時に出会ったんだよな、あの絵に。
「なあ見ろ、この絵!凄いだろう、うちの祖父さんに譲って貰ったんだ!」
見た目だけなら体育教師と間違われそうな、若くてハツラツとした顧問の先生――名前はA先生にしとくか。性別は男な。
部活が始まるって時に一枚の絵を持ってきて、部室に飾ったんだ。なんでも、先生の祖父さんから譲ってもらった絵だったらしい。
タイトルは、“昼と夜の間”。作者名はわからないってことだったけど、そんなこと俺達はどうでも良かった。一目見て、その鮮やかな筆遣いに魅了されたもんだから。
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