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斑模様の
先刻、このしゃべる猫に何をされたのかは知らない。しかし、はっきりと恐ろしい鬼の姿が視える。小料理屋で出会った小生意気な少年に苛立ち追いかけてきてしまったが、ただ者ではなかったらしい。
すっかり酔いも冷めてしまった。
「おい、化け猫」
「猫、言うな。オイラは狐だ」
驚いた。
この斑模様の生き物は狐だった。
ではなくて。
「あのガキは大丈夫なのか」
生意気だが、子供は子供だ。
あんなモノと戦りあって無事なはずがない。
「りゃりゃ、酔っぱらいも心配かー」
「んな訳ねえだろ」
図星を突かれ、思わず否定してしまう。
いちいち癇に障る狐だ。
「りゃは、弥之助なら大丈夫さ」
男の考えを見透かしたように、丸い金色の目が笑う。
「お、間もなく片がつくぞ」
行くぞと言い置き、くねと尻尾を振って狐が歩き出した。
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