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第三話 病院にて その2
……ピロンピロンピーーーピーーーー……
「先生っ!男性病棟の姫小路様のバイタルが!」
「ええ、分かっています。恐らく電極パッドを剥がされたのよ。少し様子を見て来なさい。いいこと?くれぐれも変な事はしないのよ?」
「はいっ!」
此処は某大学病院のナースステーションです。
私は今井理子、26歳の看護師です。上手く大学病院に就職出来たものの、職務は深夜当番でした。
それは患者様との対応よりも事務作業の割合が多く、ぶっちゃけ期待していたものとは異なりましたが、それでも与えられた場で上手にやっていこうと訓練に励んでいます。勿論、今回の様な事態の時の為の対応も学んでいますので、その事を知っていらっしゃる先生は私に機会を与えて下さったのだと思います。
私は素早く棚から男性病棟専用のドアキーを取ると、ナースステーションから足早に去りました。
この姫小路様という患者様は同級生の雌ザル共に暴行を受けた為、当院に運ばれて来られた方。慎重に対応をしなければなりません。
男性病棟の壁にドアキーを差し込み、姫小路様の病室の前に立ち止まると一つ深い呼吸をします。ドアの隙間から光が溢れているので完全にお目覚めなのでしょう。ドアにノックして、声をかけてみましょう。
「姫小路様、失礼致します。入っても宜しいでしょうか?」
「嗚呼、はいはい。どうぞー!」
だんまりを決め込まれるか、出て行けと怒鳴られるかと思っていましたが、姫小路様は予想と反して明るい声で招いて下さります。この時は、対女性パニックを起こされる可能性があったので少し安心致しました。この後、パニックを起こすのは私であるとは知らずに……
「失礼致しま……」
病室に入るとそこには上半身を裸にしながら、ベッドサイドモニターと格闘されていらっしゃる姫小路様のお姿が目に入り、私は思わず若くて綺麗な素肌に目がいってしまいました。そして、初めは浮き出た背骨や肋骨を観ていたものの、徐々に目線は上がり遂には鎖骨にまで行き着きました。
鎖骨。それは顔と胸の中間点。鎖骨さえ見ればセクシーポイントである胸の形が想像……いえ、妄想出来てしまう罪な骨。
そして、鎖骨のラインに従って少し視線を下ろすと小さくて可愛い乳首様が姿を覗かせています。これが幻のDK(男子高校生)おっぱい。
「ッ!!!……」
思わず息を飲んでしまうのも仕方ないのです。
というのも、私の仕事は深夜当番ですので、余り患者様に接さない上に、これくらい若い方は滅多に入院されない為、生で見るのは初めてでした。
昏睡状態の姫小路様とは何度かお会いし、御顔の方はそこそこ(・・・・)イケメンであるとは知っていましたが、その身体は服のベールに包まれていて未知数でした。しかし、その半分が解禁されている今、その若い身体に魅了されている自分がいます。
「すみません、このシールみたいなの気持ち悪いんで、剥がしてもらって良いですか?」
突然私の方へ振り返った姫小路様は私の顔を見ると刹那、驚いた顔に一転されました。
私が無意識下にガッツいている肉食の女の顔をしていたからなのでしょう。その表情と事故の件とが重なってしまわれ……
姫小路様の表情から何となく不味い事を感じ取った私は急いで返事をしました。
「す、すみません!ゴム手袋を直ぐに取って来ます」
「…………いえ、別にそんなん使わなくて良いです。取り敢えずこっち来て貰えますか?」
「えぇ……ぁゎゎ……」
そういって私に裸を見せながら手招きする姫小路様。正直、これは罪だと思います。私は患者様のご意向だからと、自分に言い聞かせながら姫小路様の正面まで移動すると、
「本当に手袋を取りに行かなくても良いのですか?」
と最終確認を行いました。すると姫小路様は、キョトンとした無垢な可愛い顔で私を見て少し首を傾げながら、
「いいから気持ち悪いんでこのシールみたいなの剥がして下さい」
と私を膝まづかせるのです。
くぅぅぅぅ、強引な無知シュチュ。私のおねショタ属性が開花しそうです。
あくまでこれは施術だと言い聞かせながら、痛くないようにゆっくりと電極パッドを1枚ずつ剥がしていきます。
「ふふふっ」
電極パッドを剥がしている沈黙の中、私の事を見ながら姫小路様は吹き出されました。
「申し訳ないです。剥がす時くすぐったかったのですか?」
「うううん、違いますよ」
先程、一瞬だけだが脇腹の方に手が当たった……いいえ、綺麗な腹斜筋に思わず手が伸びてしまった事を責められたのかと、内心焦りながら尋ねましたが、勘違いのようでした。では、一体どうされたのでしょう?
「ええっと……今井さん?の表情が面白かったので」
姫小路様が私の名札を覗き込む時、とってもいい匂いがしましたの。
……はっ!では無くて、私が成る可く無表情にしようとする努力は滑稽に映るのでしょうか。少し納得がいきませんが、対女性パニックを起こされるよりはマシだと思いましょう。
「あ、ごめんなさい。なんだか不貞腐れてますね」
姫小路様はそう仰って私の頭を撫ではじめました。
私はベッドで腰掛ける姫小路様の正面に膝まづいている格好ですから、されるがままです。
そして遂には私の頭をギュっと抱き締めて、私の耳たぶに吸い付かれました。
「ゃ!姫小路様、な、何を」
私が小さい悲鳴を上げるのにも関わらず、姫小路様は一向に離れて下さりません。それどころか、耳元で囁かれました。
「ふふ、可愛い。ねぇ、シールの跡、ベタベタするの。舐めて」
「ぷぇぇ?!」
姫小路様は錯乱する私にはお構いなく、私の脇から背に手を通し、ゆっくりと持ち上げ私を立たせると、そのままベッドに引きよされました。ここまでは私もまだ何とか理性は保てていましたが、
「綺麗にしてくれたらご褒美あげるよ」
と囁かれた事でその理性は完全崩壊してしまいました。姫小路様に暴行を加えた同級生達をメス呼ばわりした私でしたが、今の私の状態は完全に彼女達とは変わらないでしょう。姫小路様の脇腹、肋骨、そして、おっぱいを獣の様にむしゃぶりつきながら、じっくりと観察します。
キメ細やかな肌、骨や筋肉が浮き出ている程のスレンダーな身体。そして何より、頭が蕩けてしまう汗の味と匂い。ずっと舐めていたいと、私はいつの間にか無意識に姫小路様を抱き締めていました。
「嗚呼、良い子だ」
と、仰って抱き締め返して下さる優しい姫小路様。
それから2人は暫くの間抱き合ったまま何も動かず、何も発さなかったのですが、遂に姫小路様の方から沈黙を破られました。
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俺の病室は個室である。そして、ある程度ナースステーションから離れている為、声が出ても問題は無いだろう。監視カメラの有無に関しても俺なりには確認をした。ぶっちゃけると、ヤれ無くはない。ただ……
俺は病室付属の棚の上にある小さな置時計を見る。今井さんがこの部屋に来てから15分。何かアクシデントが無い限り、そろそろ怪しまれる頃合だ。ちょっと調子に乗り過ぎたな。タイムリミット間際にアレを言おう。
「……こんな事今言うのもおかしいのかも知れないんだけど、俺、記憶喪失かも知れない」
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