第八話 会社デート編その2

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第八話 会社デート編その2

「小町本部長、資料です」 私は押小路 椿。出世コースと呼ばれる経営企画室から異動願いを出し、小町本部長の部下として無事転属された流浪系実力派女子である。 何故、出世コースから外れたかと言うと、単純に小町本部長が好きだからである。 小町本部長は、吊り上がった目ともう高校生になった子供が居るとは思えない程のスタイルの良さが特徴なスーパーエリート勝ち組女子である。 因みにどうでもいい事だが、姫小路家は応仁の乱の後に土佐に流れ着いた土佐一条家を一代で天下を治めかけたの5代目一条鎌房の次男一条内雅の血を引く非常に高貴な血筋であり、その一条鎌房の正室の三条西実枝の次女のお家である三条西家の分家が押小路家なので、小町本部長と私は物凄く遠い親戚でもある。 で、話を戻す。 天は二物を与えずと云うが、小町本部長は違う。 同年代ではその名を知らぬ者は居ないと言われている程の才女である。 常に全国模試では首位を譲らずそれどころかあのケムブリッジを主席で卒業すると直ぐに、婚活の為と、医師や弁護士、公認会計士等を初めとする国内外の問わず兎に角難関な資格を鬼の様に取り続けた事で世界的にニュースにもなったくらいの天才である。お蔭で就職しても日本国の経済を支配されるんじゃないかと、国や財閥のお偉いさん達が怖がって出世コースから外しまくっている次第である。 今日の腑抜けたニヤニヤ顔が止まらない小町本部長の顔を見ていたら全くそんな事は感じられないが。 「うふふ、はぁ〜い」 「もう、本部長。どうしたんですか?」 「べ、別に何も無いわよ。はい、仕事仕事!」 つい先日までの本部長は愛する息子様が襲撃を受けたそうで凄まじく緊張感があったが、今日は緊張感が無さ過ぎて逆に怖い。 「ねぇ、小町本部長。息子さんと何かあったんですか?」 「えへへへへ……うふふふふ」 なんか言いなさいよ。気持ち悪いわ。でも、私は確信している。小町本部長のメンタルを左右する事なんて息子さんにしか出来ないという事を。 皮肉な事にあれ程資格取得に頑張って、精液検定でSランクの旦那様をGETしたのは良いものの双方の関係性は完全に冷え切っているからだ。逆を言えば、その分の愛情まで息子さんに注ぎ込まれている訳で…… 「ふふふ……教えないわよ。キャー♡♡あーくん好き♡」 この通り重症な訳だ。 「ねぇ、押小路」 「はい。なんですか?」 「貴女、確か、中小企業診断士の資格持ってたよね。明日、学習資料持って来てくれないかしら?」 「はぁ……何を突然。起業でもするんですか?なら、私はこんな会社なんか辞めて小町本部長の下で働きたいです」 「うーん。それはあーくんと相談かしら。起業したいって言い出したのはあーくんだから。ふふっ、あのね、やっぱりあの子は私の子なの!事故に遭ってから急に天才になっちゃったの。聴いてぇええ」 出た、いつもの親バカ。私はこの時はそう思っていたけれど、勝手に話し出す本部長の言葉を聞いて途中からやはり才女の子は神童なのでは?と思いつつあった。 「ふふっ、あの子ね、検索履歴消して、隠蔽してるつもりなのかもしれないんだけれど、ちゃんと海外の経済誌とか新聞記事読んでるってバレてるのに可愛いわよね。他にも株価推移とかインターネットの歴史なんかも調べているわ。でも、どれも結構的確な検索キーワードを調べているのよね。それも結構短期間で次の検索に移っているし、まるで未来を知っていてそのシナリオ通りに進行しているのかを確認している様な調べ方なのよ。基本的にずっとエロ動画かエッチな掲示板の閲覧時間が占めてるのよね」 「えっ!?はいっ?小町本部長、今なんと仰いました?」 「未来を知っているような?」 「いや、そこじゃなくてその後!」 「ふふふっ、あの子結構積極的でエッチな子よ。そこはパパに似たのね。でも、パパは冷たかったけれど、あの子はとっても優しくて情熱的だわ。あ、でも、遠慮無く中出ししてくるのが少し怖いかしら。妊娠したらどうしましょ。ふふふっ」 そう言って恋する乙女の顔になった小町本部長。こりゃもう仕事にならん。 ってか、…………ヤったよな!!! 昨日は今日程は浮かれていなかった事から考えて、コレは確実に昨晩に近親相姦を致しましたよねっ!本人が自白しちゃってるよっ!中出しされただと!?うらやまけしからん!!! この日、本部長は定時に帰りたがっていたが何とか居残りされる事に成功した。その変わりに延々と呪いの言葉を吐き続けられたからそろそろ死ぬかもしれない。 ***************** 1週間後。 「ねぇ、押小路」 珍しい。即断即決の小町本部長が悩み事をされている御様子だ。これは絶対息子さんが関係する事案だろう。 「はい。なんか難しい顔をされてますね」 「あーくんは可愛いって言ってくれるわ。それも何度も」 はいはい。惚気はよせ。っていうか、本部長がイケメンやら天使やらというあーくん殿に1度お会いしたい。1度、写真を見せて欲しいといったら、目垢がつくからダメと言われた思い出しかない。パワハラと訴えようかと思ったけれど、男性関連の話なので、逆に男性贔屓の裁判所からホントに目垢がつく的な判決が下される気もしなくはないので辞めた。男性側の勝率って刑事訴訟の刑事側の勝率よりも高いのよね… 要はほぼ100%。日本の司法が陥落した今、マトモな裁判を行う国は地球上から消し去ったに等しい。まぁ、男性が関わらない訴訟に関しては非常に公平全くと言っても良いくらい汚職が無いけれど。 「で、そのあーくん様が今度はどのような御要望を?」 起業したいの次はなんだ?男の子の欲しいものが思い付かない。いや、これだから私は結婚出来ない……って自虐する所じゃなかった。 「うううん、あーくんはね、無欲なの。ちょぴりエッチな御要望だけしかしないわ」 はいはい、そうですか。数年前から合意の元の近親相姦と婚姻は認可される様になったから合法的にお幸せにどうぞ。 「あーくんじゃなくて、私がね、あーくんに職場に来てみないかぁ?って誘っちゃったの。ねぇ、押小路。どうしたら良い?言っちゃったのよぉぉ」 「…………息子様のお歳は15でしたよね。なら、毎年4月の第2週辺りに私立鷹司高校の社会科見学と新社員交流会があるのでそこに混ざってみては」 長い沈黙の後、小町本部長は、 「やっぱ押小路は使えるわね」 と、仰った。全然褒められた気がしないんですけど。 ************ そして、遂に私立鷹司高校の社会科見学の日がやってきました。小町本部長は息子さんと社員専用入口から中に入って団体がくるまで会議室で待機するという事なので、御出迎えに参りましたが…… スーツコートを完璧に着こなされたモデル級の美青年と腕を組み、此方へやってくる小町本部長が見えました。な、な、な、なんというイケメンなんでしょう。しかも、指まで絡めてこのイチャつきぶりは、なんともけしからうやましい。 で、ではなく! 「ひゃひゃひゃ、ひゃんざいでしゅよホンブチョォォ!!!」 「お、押小路、ち、ちがうんだ!!!」 此処にカオスが誕生した。
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