第九話 会社デート編 その3

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第九話 会社デート編 その3

時の流れは早いもんで転送されてから2週間程が経ち、4月になった。 色々と変わった事があるが、まず、目に見えて分かる事はなんといっても俺の部屋だ。 例のガラクタレンジャー戦士達はブックオンに買い取られ、代わりに机の上はスマホは勿論、パソコンとマイク付き高級ヘッドフォンが置かれている。そして、本棚には高校生の参考書と六法全書を初めとする法律関係の本がズラリと並ぶ。 一時期、高校生向けの学習塾や、ロースクールに通う話をママにしたんだが、全て教えるわ!と、言われたのでイチャラブ家庭教師がリビングで教えてくれることになった。ママの教え方は物凄く教科書地味ており、的確なのは的確なんだがなぁ……この前、 「何が分からないのかが分からないわ」 と、言われてちょっとショックを受けた。他にも法律関係の話題ではどの説を取るかで論争したりする。因みに、結構な確率で負ける。でも、仲の良い関係を築けていると思う。俺はとても楽しい。 ヨウツーアーの方は全くと言ってもよい程、再生数が取れない。そもそも日本での認知度が低い。だから、英語字幕を付けたり、日本語や日本の歴史を優しく教える動画とかにコンセプトを変えている。この世界の歴史は転送前の歴史と若干違っていたりするので、俺自身も結構こんがらがるが勉強になる。やっぱり当たり前のことだけど、教える側が完璧に理解してないと教えられないからね。 次にママの部屋も見た目がガラリと変わった。バベルの塔ですか?というくらいひたすら積み上げられていたありとあらゆるものを捨てるのか、それとも、残すのかを一緒に整理して、棚を整理整頓した。更に、ママの趣味であるヨガやピラティスのグッズはリビングに移動させ、代わりにアロマオイルがママの部屋に新規参入してきた。ん?仕掛け人?俺ですよ。 転送前の時から元々俺はアロマオイルボディーマッサージの資格を持っているし、アロマ検定1級の保持者である。だから、その能力をちゃんと使おうと思ってママにお願いしたのだ。 「ねぇ、ママ。最近お疲れでしょう。マッサージしてあげる……からこれ買って」 と、ラベンダーやレモングラス等の有名どころは勿論のこと、イランイラン等の特徴的な香りまで揃える。因みに俺の1番好きな香りはサンダルウッドであり、ママも同じらしかったので2人の御愛用商品として我が家にはサンダルウッドの瓶が2本ある。 最後に変わった事は2人の愛の結晶だ。といっても、子供が出来た訳では無い。ステータスが大きく変化した。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【名前】:姫小路 暁斗 【性別】:男 【年齢】:15 【職業】:社長(職業ボーナス 高級車乗車時魅力UP) 【レベル】:18(経験回数) 【魅力】:84 【精液系能力】:精液媚薬(小)・唾液媚薬(小)・精液製造量UP(微)・精液製造速度UP(微)・精液放出量UP(微)・精液品質UP(小) 【チンポ系能力】:長さUP(小)・太さUP(小)・硬さUP(小)・クリティカル率UP(微)・持続力UP(微)・再装時間短縮(微) 【スキル系能力】:スキル説明(微)・スキル合成(微)・スキル分解(微)・スキル強化(中) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 特に、レベルが10になった時はステータスボードに劇的な変化が起きた。 能力欄が3つに分裂したと思いきや、ママの中に出して賢者モード中の俺の頭の中に、転送直前に聞いた例の声が流れ出したんだ。 ステータスの説明のチュートリアル的な事をしてくれたっぽい。最初はテンパってあんまり聞けてなかったけれど、後々、【スキル説明】というスキルを駆使しながらステータスを弄っている間にそうだったんだろうなぁと、察した。とはいえ、ちゃんと聞かなかったのは後の祭りなんだがな。 でだ。大切なスキルについて調べた結果、非常に重要なシステムを2つ知った。 先ず1つ目は、各系統の能力はそれぞれ10個までしか持てないという事だ。 各系統というのは、【精液系】、【チンポ系】、【スキル系】の能力の事である。 恐らく、この仕様の為に、【スキル合成】や【スキル分解】が存在するのだろう。 因みに、スキル合成及び分解は、それ自体の能力の強さのスキルしか扱えないらしい。簡単に言えば、【スキル分解(微)】を使って、俺が最初から持っていた能力である、【体液媚薬(微)】を、【精液媚薬(微)】と【唾液媚薬(微)】に分解する事は可能であるが、能力強化がされた事によって【精液媚薬(小)】と【唾液媚薬(小)】になった2つのスキルを、【スキル合成(微)】を使用して、【体液媚薬(小)】にする事は出来ないという。これに気付いた時、マジで分解した意味なかったなぁ…と反省した。 次に気付いた重要なシステムとは、スキルの強化に関する事だ。最初に前提として、1回セックスすればレベルが上がり、大体願った通りの効果を発動させる新しいスキルを得られるという事を紹介しておく。因みにだが、この場合のセックスは中出しで無ければカウントされないみたいだ。 問題のスキル強化についてだが、レベルが上がる時に新しいスキルを貰う代わりにスキルを強化するという第2の選択肢が増えた様だ。 今までは新規スキル獲得という選択肢しかなかったが、これからは強化という選択肢もあり、それぞれのバランスが大事になってくるだろう。 しかし、強化にも制限があり、【スキル強化】スキルの能力の強さを越える事はシステム的に不可能なようだ。その事に気付いてから優先的に【スキル強化】スキルを上げたので、俺は今、(中)の度合いまでスキルを強化出来るようになっている。 今後のスキル強化に関しては、精液検査の評価基準である精子量、精子の活発度、そして、チンポの大きさに振ろうと考えている。 因みに、精子量増加を願った時に獲得したスキルが【精液放出量UP】で、精子の活性化を願った時に獲得したスキルが【精液品質UP】だった。ガンガン強化して、精液検査でSランクを取りたいと思う。 それでまぁ色んなスキルを得たとはいえ、ぶっちゃけ、(微)や(小)の効力では、全て気休め程度の効力しか無く、1番働いている補正はママの母性や子に対する愛情、更には貞操観念逆転世界というのであるのは間違えない。あ、それと、婚約関係の近親相姦は合法的であるという法律がある事かな。やっぱ法的根拠はデカい。 さて、4月になったので、以前ママが言っていた、 「ママの職場見に来ない?」 が実現した。 同じ鷹司財閥系傘下の教育部門に存在する私立鷹司高校の社会科見学の授業があるらしく、俺もそこに紛れ込めば問題無いんだとさ。因みに、私立鷹司高校は本来ならば俺が行くはずだった高校だ。まぁ、今でも後悔はない。何も稼がずに無駄に3年間ボーっとしてるのは性に合わんからな。 それに、 「因みにだけど、今日来る子達がママのところの会社で働ける確率はどのくらいなの?」 「そうねぇ、そのまま上に上がっちゃったら本社勤務はほんの数パーセントね。そして、相当功績を積むか、男の子を授かるか、何か特別なコネクションが無い限りはせいぜい係長までにしかなれないかしら」 という学歴の壁が有るんだよな。 ママが運転するポルシェの助手席からママの勤めているオフィスビルを見た。滅茶苦茶高かった。所謂、超高層ビルっていうやつだ。いいよなぁ、こういう会社は全部落ちたんだよ。やっぱ一流の私立大学に行っても国立の超一流の大学には負けるんだよ。 「そういやママってどこの大学だったの?」 「ん?ケムブリッチよ。イギリスにあるの。あーくんは知ってるかなぁ?」 …解せぬ。俺が落ちた国立の超一流すら裸足で逃げ出すタイプの学歴だった。 「知ってるよ。アメリカのハンバーガー大学かイギリスのケムブリッジかって言われてる奴でしょ。ママが超絶天才遺伝子なのに俺が馬鹿過ぎて辛い」 どうしてライダー系の……いや、レンジャー系だったかな。兎に角、15になってもそんながらくたで遊び続けていたのかが謎だ。相当、親父がクズだったんだろうね。 「そんな事ないわ」 と微笑みながら撫でてくれる。うん、わかった。ママが甘すぎたから馬鹿なんだよきっと。 「にしても、やっぱスーツって戦闘服なんだね。いつもと違って多少なりとも覇気がある」 「そ、そう…かしら?」 「あーダメダメ、照れちゃダメ。女子力じゃなくてウーマンパワーでクールビューティーに……って、俺自分で何言ってんのかわかんなくなってきた」 因みに、俺もスーツである。それに加え、春用の薄いコートを羽織って、男性用の化粧まで施して超絶お洒落さんである。ママがキャッキャ言いながら、朝から俺をドレスアップしていた。流行りのものとかわかんねぇから着せ替え人形だよ。なんか悪いか。 「さて、駐車場に入りまーす」 ママ、ノリノリだな。さてさて、これが社員駐車場か。確か、早いもん勝ちというルールにはなっているものの、あくまで管理職抜きという暗黙の了解なクソゲーだ。どうせ新人社員は直射日光えげつなく入口まで果てしなく遠い場所にしか停めれませんよっつうの。 「あれ?ママ、入口近いよ。良いの?」 「あれ?言ってなかった?ママ、本部長よ」 あ、くっそ偉かった。 「さて、到着。予定より少し早いけどまあ行きましょう」 ママは完全に会社モードに入ったようだ。口調も動作もきびきびしている。 「待って、一緒に行こう。腕組まないと迷子になっちゃうよ」 俺はそう言って当然の様に、右腕をママの左腕に滑り込ませ、指を絡めると、隣にはキョロキョロと周囲を警戒する不審者ママが出来上がっていた。反応がいちいち面白いな。 「なにしてるの?早く行こう」 ついでに俺は、化粧にて魅力UPした顔でママを覗き込むと、 「もぅ、いけずなんだからぁ。この罪深い小悪魔めぇええ」 と叫ばれた。なんかこれ聞くの2回目な気がする。ママなりの最大限の照れ隠しの表現なんだろうな。 「あ、小町本部長。おはようござザザザザザッッ」 黒髪ショートカットで目力があり鼻が高い美人なOLさんが俺達の前で固まった。 「ひゃひゃひゃ、ひゃんざいでしゅよホンブチョォォ!!!」 「お、押小路、ち、ちがうんだ!!!」 うーん、ママその言い方悪過ぎるって。 なんだか嫌な展開になりそうな希ガス……
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