君の瞳には映らない

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晩秋の晴れた日の街は、茜色の夕焼けが燃えるようだった。商店街を抜けると順番ににコインランドリー、弁当屋が、お肉屋さんがある。駅を利用する仕事帰りのサラリーマン、学生はよく通るので古いがそこそこ繁盛しているようだ。緩やかな坂を登ると踏切がある。踏切の先は住宅街で、踏切を渡った先の左手に畑中透のアパートがある。この時間にここを通る時は電車が多くて踏切は必ず待たなくてはならない。何処かでパトカーのサイレンが鳴る。けたたましくサイレンを鳴らしパトカーが何台か大通りの方を通過していく。そんな事どうでもいい、足の早い畑中透《はたなかとおる》の後を水野春樹《みずのはるき》が慌てて追いかけている。 「待ってよ透くん」 透は春樹が着いて来れなくても気にしていない。昔から、人のことなんかお構い無しだったもんな。春樹は思った。 透と春樹は小学校から高校まで一緒だった。成績の良い透と春樹では成績にどうしようもない位の差があった。だけどどうしても春樹は透と同じ高校に行きたくて塾に通って死ぬ気で勉強して下から何番目かの順位で合格をした。いつも春樹は透の後を追いかけてたから周りの人間は子分と思っていたかもしれない。透は嫌がらなかったし、春樹は子分でも何でも透君の後を追っかけていたかった。 透のアパートに今日は二人で帰ってきた。ここに二人で帰る時は透がご飯を作る。作ると言っても駅前の商店街のお肉屋さんでコロッケを買って帰る。後は、ご飯を炊いてキャベツを千切りにして味噌汁を作るだけ。小さなテーブルに丸椅子を二脚並べただけの食卓。 「いただきます」 二人で食べ始める。向かい合って食べるのにほとんど会話もしない。食事が終わると黙って透が片付けた。 テレビをつけて何となく二人で見た。透の好きなバラエティー番組だ。春樹は本当は9時からドラマが見たいけど言わない。春樹の部屋でもきっと言わない。 透のスマートフォンが鳴り、透が話出した。 「おつかれー」 「あっ俺パスするわ………合コンとか苦手だし」 1拍空けて透は返事をした。 「そんなんじゃないよ………」 何を言われたのか透の表情が硬くなる。 「分かったよ…………行くから」 「じゃあな………」 「合コンがあるの?」 春樹は明らかに不機嫌になった透に言った。 「行きたくねーよ……春樹」 「透君……かっこいいから仕方ないよ」 「はぁ〜風呂入って来るわ」 この部屋にはベッドがひとつしかない。ソファも布団もない。だから二人で同じベッドに入った。 「こっちこいよ春樹」 「うん……」 「お前も行く?合コン」 暫く考えて春樹はこう答えた。 「……後ろからついていくよ」 小さすぎるベッドに二人で引っ付いて寝る。小学校の時からこんな風に寝てたから大人になっても違和感はさほど無い。
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