君の瞳には映らない

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田中に公園で会った少女の話をした。翌日に娘が死の直前に救急搬送された病院に赴いた。やっと娘が見つかると思ったがその日、田中の娘はそこに居なかった。落胆する田中と共にアパートに帰った。 「明日も行ってみましょう」 落胆を隠せない様子の田中に春樹はそう声をかけた。 「今日こそは煌星に会えると思ってたんだ」 「疲れたでしよ、とりあえず何か食べて下さい」 田中はお前が代わりに食ってくれと言って体を空け渡した。春樹は夕食を作って食べた。田中には伝えず確かめてから行けばよかったと春樹は思った。期待した分、落胆が大きかったのだろう。田中は日に日に衰えている。春樹が体をつかっているのは当然、田中の負担になる。だが、田中は自分自身で生命維持をしようとしなくなっていた。廃人のような男の娘を早く見つけなくてはいけない。 「お前、彼氏に会いたいんだろう?」 「そりゃ会いたいですけど今は娘さんが最優先ですから」 「会ってもいんだぞ……俺はその間寝てるから」 田中は言った。 「優しいんですね、田中さんは」 「分かるよ。俺だって愛し愛されたことはあるんだ、守りきれなかったけど……」 「奥さんですか?」 「全部、俺が悪いんだよ」 「どうしてそんな風に考えるんですか?田中さんだけが悪いなんてそんな事ないと思います」 沈黙があった。 「俺が死ねばよかったな」 独り言みたいに田中は言った。 死ねば良かったなんて聞いて春樹は切なくなった。 「む、娘さんにあげたらいいじゃないですか?この体」 言ってはいけないと思いながら春樹は言った。 「僕にくれるって言ったけど娘さんに体をあげたら娘さんは生きられる」 田中は逡巡した後こう言った。 「5歳の娘が40代のおじさんになって生きていくのは不憫だろう。娘は俺があの世に連れていく。お前は良い奴だな」 良い奴なものかと春樹は思った。はっきりさせたかったのだ。田中が心変わりでもしたら困る。 「じゃあこの体僕にくれますね」 「ああ、約束するよ」
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