君の瞳には映らない

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春樹は透に会いに行きたかった。田中が会ってもいいと言ってくれてから会いたい気持ちがとまりなくなった。そうは言っても日中は田中の娘の捜索があるためなかなか時間は作れない。会いに行ってから1ヶ月以上は経って季節は本格的な冬になった。透の携帯番号は記憶している。田中に許可を貰いコールした。 「透くん、春樹だよ」 「ほんとに、春樹なのか?」 田中からはかすれた声しか出ない。声だけでは春樹とは判断出来ない。 「本当に僕だよ。ごめん連絡できなくて」 「どうして連絡しないんだよ」 咎めるような言い方だった。 「ごめんね、色々事情があって」 「俺からは連絡しちゃダメか?」 「連絡は僕からするよ。体を手に入れたら、そしたら透くんの所に行くから」 「えっ?体を手に入れるってどういうことだよ?」 透に追及され、春樹はまた黙った。 「教えてくれよ、お前がどんな事しようとしてるのか。何でも話してくれよ、一緒に考えたいんだよ……」 本当の事を話したらどうなるんだろう。透は清廉潔白な性格だ。田中が消えて代わりに春樹が生き返ったなんて知ったら、手放しで喜んでもらえなくなるのではないか。 そんな方法で生き返っても嬉しくないと拒絶されたら……。 「また、連絡するね」 「ちょっとまっ」 最後まで聞かずに春樹は電話を切った。 ため息が勝手に溢れた。 体を手に入れる事をもっと単純に喜んでくれると思っていた。 そもそもどうしてこんな目にあわなくてはいけないのだろう。殺されなければ大学生だった。自分を殺した犯人が憎い。どうして自分だったのか?どうして面識もない人に殺されなければならないのか?考えても考えてもまともな答えは出ない。悔しくて潰れそうになる。 でも死んでなかったら透とはこんなに関係が早く進まなかったはずだ。死んだから透の所に戻った。生きていたら苦しい恋心を抱えたまま、一生友達のままだったかもしれない。お互いが恋人を作って結婚してそれを作り笑顔でお祝いしていたかもしれない。そうなっていたら生きていても苦しかったはずだ。今は想いが通っている分、幸せなのだ。
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