ヤンデレ伯爵様から逃げられない(短編)

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  私は山川 有加という名前で、日本という国で中小企業の平凡なOLをしていた、はず。ああ、フラッシュバックのように色んな記憶が蘇ってくる。  例の恋愛小説も書店で売られていて、なんとなく手にして読んだんだ。   学生時代はこんな甘々なライトノベルをよく読んだっけ……って懐かしい気分で、ところが華やかな漫画の絵柄の表紙とは裏腹にメロドラマのようにドロドロで陰鬱なストーリー、ヒーローであるオスワルド伯爵は所謂ヤンデレ属性でかなり病んでる。   鬱展開の末、ヒロインはヒーローに殺されメリーバッドエンド。  ああ、そうだ、その本を読んだ数日後に事故に遭って死んだんだっけ……。   つい数分前までクローディアという女性の意識だけだったのに、そこに有加という人格が降りて来たような感覚だ。   クローディアはヒーローの前妻、本の中では名前が数回出てくる程度のモブ。  ヒーローであるオスワルドはクローディアの前にも結婚していた相手がいた。いやその前にも恋人がいた。
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