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「…どっ、どういうこと!?バレッタなんて一度たりとも外した覚えはないわ!確かに帰宅してから紛失していたことに気付いていたけれど」
『焼却炉に投げ捨ててください』
なんて書けるわけないし。
バレッタなんかどうでも良い。どうしても、あのイカレ伯爵とお近付きになりたくないのだ。
日曜日、渋々あの屋敷を訪れた。
人当たりの良い家政婦は喜んでクローディアを迎えてくれた。
客間に入ってすぐ、ソファーに座って紅茶を飲んでいたオスワルド伯爵が立ち上がった。
「ようこそ、どうぞお座りください」
「いいえ。忘れ物を受け取りに来ただけよ。すぐお暇するわ」
「レミーに持って来させよう。早く座りたまえ」
コツコツコツと時計の秒針の音が静かな部屋に響く。
居た堪れない気持ちで入り口を見つめ、中々現れてくれない家政婦を待った。
伯爵様が私に茶を淹れてくれた。カップの中の真っ赤な水面を見つめて浮かない顔をする私を彼は真顔でジッと見ていた。
ふぅ、ふぅと熱を冷ます。
伯爵様はジッとこっちを見ている。
怖い。
「……こ、紅茶に、何か入っています?」
ニッコリと笑った。
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