ヤンデレ伯爵様から逃げられない(短編)

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「いい、君が飲んだのはただのハーブティーだ。神経鎮静作用とリラックス効果のある……」 「え……」 「よっぽど昨夜は寝不足だったようだな」  え!?睡眠薬盛られたってわけじゃなかったの?しかもここって伯爵様のベッドの上!  顔がゆでダコのように真っ赤になっていた。慌てて立ち上がったところ、予想してたよりもふかふかのマットレスに足を取られて、ベッドの脇に座っていた伯爵様めがけて倒れ込んでしまった。  私が、伯爵様を抱き締めているような図……。  伯爵様は唖然としていた。  間近で見る整った顔が眩しすぎて直視できない。すぐに身体を離した。 「ごっ……ごめんなさい!重ね重ねご無礼を……」 「気にしないでくれ」  穏やかな善人100パーセントの笑顔。警戒しすぎ?  よく考えたら、小説の中では私がお金目当ての強欲な妻で、それに怒った伯爵に殺されたのよね。  そもそも伯爵は乗り気ではなくって、クローディアが結婚の話を進めて2人は夫婦になった。2人の間には恋愛感情なんてなかった。 「……実は君をわざわざ呼んだのにはワケがあってね」  伯爵の落ち着いた低い声。 「……はい?」
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