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その中で結婚をチラつかせたりもしていた。
伯爵様はそんな彼女に対して始終淡々としていたけど。
「嫌ですわ、オスワルド様。楽しいお食事に席のちょっとした軽口?のようなものですよ。うふふふ」
適当な言い訳も思いつかず笑って茶化した。
失礼なのかもしれないけれど、いっそ嫌ってもらっても構わない。
しん……と馬車の中が静まり返る。
緊張して額に冷や汗が滲む、もしかして怒っちゃった?伯爵様はずっと目の前で俯いたままだから顔色が窺えない。
「……君はああいうようなことを他の男にも言ってるのか?」
「……オスワルド様?」
ギロリと彼の鋭い視線が刺さる。
私は呼吸さえ止まったかのようにフリーズしてしまった。
伯爵様はスッと物音も立てずに立ち上がると私の前にやってきて仏頂面で見下ろしてきた。
ゾワッと恐怖で全身の毛穴が開く、
ま、まさか、今まさに……予定よりもだいぶ早く、あっけなく、この場で、殺される!?
膠着状態のまま馬車が屋敷の前に到着した。
「----てもいいか?」
「エッ、ハイーー……?」
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