ヤンデレ伯爵様から逃げられない(短編)

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プロローグ ーーある日私クローディアは自分がとある恋愛小説の中の登場人物だということに気付きました。  目を開けて最初に目に入ってきたのは手作りのカボチャのパイ。 顔を上げると向かいの席には青い髪をした色白の男が紅茶を飲んでいた。  細くて長い角ばった指に大きな手のひらが印象的。彫りの深い顔をしたイケメン……。   ガシャンッ……  私が手に持っていたティーカップが床に落ちて、割れた。  しかし昼間なのにうす暗い屋敷の中 駆け付けて掃除をしてくれるような使用人も居らず、カップに入っていた紅茶が床の上でただ広がっていくだけ。 「ーーどうした?大丈夫か?」   さっきまで無言で食事をしていたこの屋敷の主人であるオスワルドが私を見つめている。   私は慌てて床に落ちたカップを拾って、とりあえず近くにあった布で床を拭った。  頭から血の気が引いていく。   『孤独な暗黒伯爵と闇に堕ちたガーベラ』というタイトルのティーンエイジャーの女の子たちに人気だったライトノベル恋愛小説。
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