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それは突然の出来事だった。
ヒュルルル……ドスン!
突如、僕の目の前に何か黒い塊が落ちてきたのだ。
「ん……? 何だこれ」
ひょいと屈んで僕はそれを拾った。
真っ黒で薄い『黒い板』。どう見てもただの『スマホ』だ。
「何でスマホが空を飛んで来たんだ? 誰かが落としたとか……」
まじまじと見るが、特に壊れている様子はない。
すると突然、電源ボタンを押したわけでもないのにそのスマホが起動し、画面全体にアニメーションの美少女風キャラがドン!と姿を現したのだ。
「やっほー! はじめまして、あなたがご主人様ね!」
どうやら、シリィやカタリーナのようなアシスタントアプリらしい。何処か微妙に90年代っぽいデザインが気にかかるが。
「やれやれ、とりあえず警察に届けるか」
ポケットに仕舞おうとすると。
「ちょ、ちょっと待ってよ! あたしを無視しないで!」
美少女風キャラが文句をつけてくる。
「無視……って?」
スマホの画面を見つめると。
「あたしはマジック・バディのアルテミス! あなた、あたしと契約して『ス魔法少年』になってよ!」
「……さぁ、警察に持っていk」
「待てぇぇ! 話を聞けぇぇ!」
アルテミスと名乗ったキャラが大声で僕を呼び止める。
「何だよ、うるさい」
「だ、か、ら! あたしは契約してくれるご主人様を探してるの! あなたは幸運にもあたしを拾ったんだから、最後まで責任をもって契約してよね!」
「知らないよ、そんなの。捨て犬を家に持ち帰った子供じゃあるまいし。だいたい何だよその『契約』ってのは。僕に何かメリットでもあるって言うの?」
アシスタントアプリを相手にマジになるのもどうかと思うが、ちゃんと会話が成立するあたり、最近のAIはよく出来ていると思う。……何故、最近の絵が描けるデザイナーを雇わなかったのは知らないが。
「メリット? ふふふ……あるに決まってるじゃない! あたしと契約すれば魔法が使えるようになるのよ! ま、ほ、う!」
「魔法ぉぉ?」
思いっきり疑いながら尋ねると。
「ああ! 疑ってるな? よし、じゃぁ何が出来るか、特別に教えてあげようじゃないか!」
アルテミスが画面の中でぐっと胸を反らせる。
「まずぅ……」
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