10 おしまいは

5/6

147人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「いえ、シャノーワー卿。ウォーベック侯爵家のこともありますし、かえって安心いたしました。兄としてはいささか複雑な気分ですが、家長としては認めないことなどありません。ただし、本人の気持ち次第ですが……私達はどんな形でも、サラに幸せになってほしいのですよ」 「私は、十分幸せです」 「君はいつもそう言うね、サラ。伯爵、恋が何かも知らない娘です。この先は貴殿次第ということで」  クレイグは男爵に向かって、すっきりした顔を見せた。   「なるほど、承知した。要は戦と一緒だな」 「敵軍を陥落させるのとはちょっと違うと思うけれどなあ。君らしいよ、まったく」 「それではお手並み拝見、ということで。ところでいいシェリーがありましてね、一杯いかがでしょう」    サラと離れるのを渋るクレイグをぐいぐいと男四人で囲む隙に、サラはサラで奥方達に腕を取られる。   「さ、サラはこちらよ」 「え? あ、あの、」 「そうそう、女同士でゆっくり話しましょうね。それではお休みなさいませ、皆様。よい夜を」  翌朝。  クレイグが来ていると聞いて喜び勇んで階下に降りたアルヴィンが見たのは、二日酔いで頭を押さえる叔父と、青い顔でソファーから起き上がれないでいるルイスの姿。  そして、叔父と目を合わせると顔を赤くしてどこかに隠れてしまうようになったサラだった。  クレイグの予定より半日遅れて、アークライト家からの馬車は出る。  ブレントモア伯爵と、次期伯爵、それに伯爵夫人候補で現子守り役の女性を乗せて。  ――有能な軍人だったクレイグの奮闘が実を結んだのは少し後。  翌々年の新年の祝賀には、仲睦まじいブレントモア伯爵夫妻の姿があったのだった。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加