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その叔母の近況などを軽く話した後でふと言葉を切ったルイスは、確かめるようにサラと視線を合わせた。
「……アークライト男爵達から、もし無理をしているようだったら、連れて帰るようにと言われていた」
「それは駄目だ」
サラの返事よりも早く答えたのはクレイグだった。
言葉を取られ驚いて口を開けたまま固まったサラと、面白そうに眉を上げたルイスに、クレイグは居心地が悪くなる――被せるように引き留める言葉が出たのは、無意識だった。
「いや、アルヴィンも懐いているしだな」
「それはそうだね。レディ、なにか不都合やご苦労は? この際だから正直に話してくださいよ」
「なにひとつございません。アルヴィン様は可愛らしいお子様ですし、待遇もとてもよくして頂いています。もちろん、クレイグ様にも」
なんの不満もないと言い切るサラに、クレイグは内心でほっと息を吐いた。
「だってさ。よかったな、クレイグ」
「お前は全く……」
「クレイグに言いにくかったら俺や、執事のトマスが代わりに聞くから遠慮せずに。なんといってもこいつは女性のことに疎いから」
「大丈夫だと思いますけれど。はい、そうさせていただきます」
朗らかに答えるサラの瞳がクレイグと重なる。
楽しそうに細められたライトブラウンの瞳にクレイグの鼓動は強まったが、あご下に添えられた指に光る金色の指輪が目に入るとスッと頭が冷えた。
忙しない感情の上下に弄ばれているようで困惑する。
――彼女は、今も亡くなった夫を愛しているのに。
その事実を確認せずにいられない。
自分の気持ちがどこに向かっているのかは、既にクレイグは自覚があった。
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