6 つなぐ手は

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 彼女の不遇な過去を聞いた今も、その心は変わらない。  変わらないのは、サラの男爵への想いも同じ。  自分を興味深そうに眺めるルイスの視線と、不思議そうに二人をそっと見比べるサラを見ないまま、クレイグは何度もそう自分に言い聞かせた。  見送りの場にはアルヴィンも同席した。こうして自室からも頻繁に出てくるようになった姿を見て、ルイスは改めて安堵の表情を浮かべた。  正面の玄関脇に寄せられた馬車へと目をやりながら、冷たい風に首をすくめて軽く立ち話をする。 「そうだクレイグ、新年には来るんだろうな」  年が明けた最初の月の末に、王家主催で大規模な祝賀会が催される。  国内に住む貴族は特別な事由がなければ、その三日の期間内に登城して王に拝謁する義務があった。  昨年は喪中ということで免除されたサラも、今年は出席する必要がある。  せっかく改善が見えてきているアルヴィンの状態を鑑みれば、短期間とはいえ二人を離すのは得策とは言えない。王都には三人で行くつもりだった。 「行かなくていいなら出ないが」 「分かっていて言っているな。向こうにはトビアス卿がいるけれど、必要なら、彼女とアルヴィンはアークライト男爵家か我が家で預かる準備をしておくよ」  生来病弱な叔父のトビアス卿は、僻地にある領地よりも過ごしやすく医者にかかりやすい王都のタウンハウスで暮らしている。  アルヴィンのことは以前より可愛いがってくれていた。  しかし、臥せってばかりの自分では、クレイグの不在時にもしアルヴィンに何かあっても対処ができないだろう、と不安を聞かされてもいる。  事故前のアルヴィンは幼い頃のクレイグのように活発で、よく木に登ったり、池にはまったりもしていたのだ。  祝賀会の時までにどう変わるかは未知だが、戻ってほしいと思う反面、たしかに叔父では活発な子どもの面倒は見切れないだろうとの予想は立つ。
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