6 つなぐ手は

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 アークライト家の家長夫妻には小さい子どももいて、面倒を見る手も多い。  サラも馴染みのあるそちらに、二人で世話になったほうが安心かもしれない。 「……考えておく」 「そうしてくれ。あ、そうだ」  馬車の上り台に掛けていた片方の足をふいに降ろすと、ルイスはクレイグへ近寄り耳打ちをした。 「祝賀会のことだが、レディ・アークライトのドレスはお前から贈れよ。さんざん世話になっているんだ、給料の他にそれくらいして恩を返せ」 「は?」 「アークライト家には『クレイグが用意する』と伝えてあるから。いいな」  予想外にもほどがあるルイスの指示への返事を探している間に、馬車は軽快に走り去っていった。  ――ドレス?   防具の見立てなら自信はあるが、女性の正装など一つも分らない。  社交をする必要がある以上、そうとばかりも言っていられないのは百も承知だが、これまでに機会もなかったのだ。 「クレイグ様?」  馬車はとっくに消え、サラが覗き込むと、初めて会ったときよりもっと難しい顔をしていた。  しかし怯むようなことはなく、サラは普通に話しかける。 「クレイグ様、戻りませんか」 「そうだな……」  上の空で返事をして、改めて目の前のサラの姿がクレイグの目に映った。  ……ゆったりとまとめた柔らかそうな黒髪で、肌の色は自分よりずっと白い。明るいブラウンの瞳は、ここに来た当初よりも笑みの形を作ることが多くなった。  濃い色の服ばかりを着ているのは、まだ心が喪に服しているのだろう。  似合うとしても、華やかな色は受け取らないかもしれない。  それに、彼女の雰囲気からすると赤や黄などよりは―― 「……青か」 「なにがです?」 「っ!?」  きょとりと瞬きを止めたサラに覗き込まれるようにして、至近距離で目が合う。
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