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8 告げることは
屋敷へ戻り、湯気の立つマグカップを半分ほど減らしたところでアルヴィンの頭がこくりと下がった。
サラがそっとカップを取り上げると、そのまま伸ばした腕の間に顔を埋めて、くたりとテーブルに突っ伏す。
「眠ったのか?」
「もう遅い時間ですし。それに、胸のつかえが取れたのでしょう。クレイグ様のおかげですね」
「俺というより……」
きっかけを作ったのはサラだ。
クレイグはそう思ったが、愛おしそうにアルヴィンの髪を撫でる姿にそれ以上は言えなくなる。
時計を見れば、いつもの就寝の時刻はとっくに過ぎていた。
日中には来客もあり、特別な日だったといえるだろう。クレイグはアルヴィンを起こさないように抱きかかえると、そのまま部屋へと連れていった。
すっかり寝入っているのを確認して毛布を掛けたサラに、何の本を読んで外に出ることになったのかとクレイグは尋ねた。
「こちらです」
サラはベッドサイドテーブルから一冊の本を取ってクレイグに手渡した。
目次を見ると、同じ作者の話が数話収録されている本だと分かる。
手に馴染み、紙は少し日に焼けているが折り目などはついていない。大事に何度も読み返しているのだろう。
聞けば、書庫の本ではなくサラの私物だと言う。
ぱらぱらと捲ると、開き癖が付いているところで勝手に止まった。
「読んだのは二話目のそのお話ですね。男の子が小さな竜と出会って、ちょっとした冒険をするのですが、湖に行く場面があるのです」
「そこで飴を食べるのか?」
「いえ、物語の中の『月のかけら』は食べられません」
クレイグの真面目な問いに、サラはくすりと笑った。
アルヴィンが起きないようにと視線を交わして寝台から離れ、暖炉に向いてコの字に組んだソファーへと移動する。
クレイグはサラに横の一人掛けを勧めると、話しやすいように正面ではなく横に掛けた。声を潜めて二人は話を続ける。
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