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「ちょっと待て、アルヴィン。俺も行く」
「あ、あの、私も……きゃっ」
既に氷は厚く張り、割れる心配はない。夏に泳ぐこの池では、冬になると滑って遊ぶのが子どもの頃の恒例だった。
それは去年までのアルヴィンも同じで、慣れた様子ですいすいと先に進んでいく。
馬には乗れても氷遊びの経験はないサラは、数歩踏み出したはいいが早速転びそうになってクレイグに受け止められた。
「掴まれ」
「で、ですが」
「いいから」
借りる腕を辞退したところで進めない。
行くにしろ戻るにしろ、一人では無理なのはどうみても明らかだ。
気まずい思いを今だけはないことにして、サラは礼を言うとクレイグのがっしりとした腕にしがみつく。
そうすると、氷の上だと言うのに危なげのない安定感で驚くほど楽に進むことができた。
二人が遅れて中島に到着したとき、アルヴィンは一本の柳の下を、薄く積もった雪を除けて小さなシャベルで掘っているところだった。
「アルヴィン、代わるか?」
「だい、じょうぶっ、ぼくがするの」
クレイグが掘れば一瞬だったかもしれない。
だが、真剣な表情で一心に凍った地面にシャベルを突き立てる甥を、クレイグは黙って見守ることにした。
やがて、カツリと硬質な音がして、アルヴィンの動きが止まる。
「……あった……」
信じられないような、見つけてほっとしているような。
息を弾ませながら、そんな複雑な表情でアルヴィンはシャベルを置いた。地面に膝をつき、泣きそうに潤む瞳で両手を穴の中へと入れる。
二人の前に慎重な手つきで取り出したのは、宝箱を模した小さな箱だった。
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