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年が明け、新しい一年が始まった。
新年の祝賀の宴に参加するために王都へと上ったクレイグは、自邸でルイスの訪問を受けていた。
「せっかくの正装なのに、不機嫌そうな顔してるな」
「知るか」
洒落者で名の通ったルイスも正装で、ブレントモア伯爵家のタウンハウスは久し振りに華やかな雰囲気に包まれている。
軍服ではない貴族服での登城は、爵位の相続承認以来。
いそいそと支度を揃えたトマスや侍従には悪いが、正直着慣れずに落ち着かない気分だった。
上機嫌と言えない理由はもう一つある。
「そんなに二人のいない毎日はつまらなかったか?」
「……連れていった本人がそれを言うか」
「やあ、怖いねえ」
揶揄うように尋ねるルイスを一睨みするが、大げさに怯えてみせる旧友にため息しか出ない。
あの日以来、アルヴィンは目に見えて元気を取り戻していった。
ジェフとも改めて話をし、轍に気付けなかった彼もまた苦しんでいたのだと知ってから、ほかの使用人達との関係もほぼ元通りとなった。
クレイグにもかなり親しんだが、一番懐いているのはサラで変わらない。
今も時折、悪い夢を見るのか夜中に起きることもあるが、以前のように歩き回ることはほぼなくなった。
この分なら、新年の祝賀会に三人で王都へ行けそうだとクレイグは胸をなでおろしていたのだが。
「仕方ないじゃないか。アークライト男爵家からぜひに、と言われれば」
紹介者のルイスを通して、一度サラに戻るようにと連絡があった。
ブレントモアのほうが家格は上とはいえ、サラからの返事を得ていないクレイグは単なる雇用主でしかない。
しかもアルヴィンはかなり落ち着いて、子守りが常時必要な状態ではないとなれば、断ることはできなかった。
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