10 おしまいは

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10 おしまいは

 精緻な彫刻が施された大扉をくぐり、華々しい広間へと足を進める。  艶やかに磨きあげられた床と、贅沢に生花を飾った室内は品の良いゆったりとした楽が奏でられ、着飾った人々がさんざめいていた。  付き合いのある貴族達と挨拶を交わしながら奥へ進み、王に拝謁をして新年の祝いを述べる。  この会の目的はそれで完了だ。その後は各自、知己を増やしたり探り合ったりの社交が繰り広げられるのだが、今のところ手を組みたいような相手はいないし、情報は足りている。  クレイグは話しかけてくる者に適当に応対しながら辺りを見回すと、ある一点で目が止まった。   「いたね。よかったな、ちゃんと着てくれているじゃないか……って、待てよクレイグ」  ルイスの制止もよそに、クレイグは広間の反対側へと人の間を縫って歩き出す。  視線は真っ直ぐに、幾人かの輪の中で微笑む青色のドレスを着たサラへ。  近づいてくるクレイグに気付き、少し驚いた顔で目を細める。  サラが瞬きを二度する前に、クレイグはすぐ傍にたどり着いた。 「レディ・アークライト」 「こんばんは、ブレントモア伯爵……お久しぶりでございます。素敵なドレスをいただきまして」  綺麗に下げられた頭には、揃いで贈った髪飾りが留められている。  小物類も身につけてくれたことに安堵の息を吐いたところに、ルイスが追いついた。 「まったく、こういうとこばっかり動きが速いんだよな、こいつは」 「シャノーワー卿、そう仰らず。伯爵とアルヴィン様のお陰で、サラも随分元気になりましたので」  
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