10 おしまいは

2/6

147人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
 そう言われてクレイグがようやく周囲に目をやると、困ったような笑顔を浮かべたサラの周りには二組の夫婦と、男性が一人。  男性三人の面差しはよく似ていて、一目で兄弟だと分かる。  ――のだが、しかし。 「ほら、クレイグ。アークライト男爵家の方々だ。そんな驚くことじゃないだろう?」 「いや、ルイス……」  アークライト家は三兄弟。軍籍にいた末弟のスタンリーともほぼ初対面だ。  髪の色は多少違うものの、皆、同じ瞳をしている。  独特の緑を帯びたライトブラウン。  ――それは、見慣れたサラの瞳の色。  言葉を失くして四人を見比べるクレイグに、アークライト男爵が声を掛けた。 「どうやら困らせてしまったようです。伯爵、よろしければ今夜は我が家にいらっしゃいませんか。アルヴィン様も叔父上様のお越しを心待ちにしておられます」  朝にお会いできたらきっとお喜びになるでしょう、そう勧められるまま、馬車へと取って返しアークライト男爵家へ向かう。  道中、ルイスは面白そうにしながらも、クレイグが何を言っても絶対に口を開かなかった。  到着した男爵家は、クレイグのところよりは広さはないものの、しっかりと手入れの行き届いた屋敷だった。  まもなくの出産のため祝賀会を欠席していたスタンリーの細君と、一足先に馬車が着いたサラ達に迎えられる。  長兄の男爵夫妻と、次男夫妻、スタンリー夫妻、そしてサラ。  こうして並ばれると明らかだ。  年齢や性別の差はあるものの、よく似た雰囲気。そして何より同じ色の瞳。 「……君達は、兄妹だったのか」
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加