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涙を溜めて微笑むサラは、愛おしむように指輪の手をもう片方の手で包み、胸元へ抱く。
誰もがその姿を、なにか大切な儚いものを見るように眺めていた。
「伯爵……クレイグ様。秘密にしていて申し訳ございませんでした」
「言えるようなことではないだろう。驚いたのは確かだが、気に病む必要はない。それで、いつ戻ってくるんだ?」
クレイグの唐突な質問に、サラはぱちりと目を瞬かせた。
「クレイグ様、今のお話を聞いていらっしゃいましたか?」
「ああ、聞いた。なにか問題があるのか」
「お分かりでしょう、私は、」
「俺が妻にと望んだのは目の前にいるサラ、君だ。父親が誰だろうと関係ない」
あまりに単純に言い切られ、サラは言葉が継げずにうろたえた。
その一瞬に手を取られ、ごく近い距離で視線が絡む。
「アルヴィンも君もいない屋敷は広くて仕方がない。男爵の分も大事にすると誓おう。サラ、結婚してくれ」
「クレイグ様……わ、私、」
「嫌か?」
「嫌だなんてそんなことは絶対に、ただ、あの、」
「はい、そこまで」
これ以上ないくらい真っ直ぐ言葉にするクレイグに、サラは最終的に首元まで赤く染めて黙ってしまった。
そこにルイスが割って入り、繋がれた手を、主にクレイグのほうを引きはがすと呆れたような声で言う。
「クレイグ、ほら皆が困っているぞ。だいたい婚姻の申し入れなら、直接本人じゃなくて家長を通すべきだろう?」
「ここにいるんだから同じことだ」
「いやいや、そうだとしてもさ。男爵、中身は保証しますが、まあ、だいたいこんな男です」
振り返るルイスに、アークライト現男爵が苦笑いで応える。
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