黒い隠しごと

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 あー……しまった、唇をかみすぎて血が出ちゃった。  商品に血がつかないよう拭かなきゃ……うん、よし。  大丈夫。 「薬飲ませてきます」 「ええ、お願い」  どんどん顔色が悪くなる彼女を連れて行く同僚。  そんな彼女に他の仕事仲間は一瞥を投げるだけ。  彼女が病弱なのは周知の事実だし、時計を見たら薬の時間でもあるらしいからこうなったのも仕方がないだろう。  だから、誰も私を責めない。  タイミングが悪かった、で済む。  ほら、これが、計画的なやり方よ  私ね、本当に貴女を許さない。  たとえこれが八つ当たりでも、もうそれでもいいわ。  貴女の言葉一つ一つ、なんにも心が籠っていないのに気づいたんだもの。  その優しい言葉。  気遣い。  挨拶。  振舞。  ねぇ、それ、貴女の心籠ってる?
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