柏木さんと俺は付き合ってなんかいません!

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─── 頭の中がやたらと熱い。 その熱から逃れるように薄く目を開けると、 『、、、い、、、し。 汰士、、、。 、、、、、、汰士』 薄いグレーの天井をバックにして、たくさんのボヤけた顔が俺を覗き込んでいた。 「あっ、目が開きますよっ」 「汰ちゃん」 「しっかりしろ、汰」 「汰士っ」 耳元でわんわん響く声があんまり大きくて、 真横から名前を呼ぶ声の主を睨んだ。 ああ。 この整った顔は、、、 「、、、柏、、、木さん?」 段々と視界もはっきりしてきて、 両親と、、、水無月さんと結城さんに囲まれ、足元にはキセくんの顔があるのがわかった。 「、、、俺」 「ああ、、、良かっ」 柏木さんが俺を抱き締めた後、 一瞬にして上から安堵の溜め息を浴びた。 すぐに医者らしき人が呼ばれてきて、 「少し下がっていてくださいね」 柏木さんと入れ替わると、俺の胸を開き聴診器をあてる。 その途端一斉に、 『ぅわぁ、、、っ』とか『おぉ』とか、 『すげぇな』とかなんとか、、、 とにかく全員が声を上げた。 先生もしばらくは真剣な面持ちで胸元あたりを目視で確かめ、身体のあちこちを診ていたけど、モニターを確認した後は笑顔で言った。 「昨日君は落雷に遭ったんだよ。 たまたま側にいた方が応急処置の知識があったようでね、すぐに手当てしてくれたのが不幸中の幸いだった。 今は心電図の波形も安定してる」 「では先生、息子は」 親父の顔は青ざめ、 「一晩越しましたし、ひとまず安心して良いでしょう」 「そうですか」 額の汗を拭って近くの椅子に座り込み、 その様子を見た母親は、 「あんなに晴れてたのに雷に当たっちゃうなんて、汰ちゃん凄い。 母さん宝くじ買いに行かなくちゃ」 軽口を言いながら目尻を拭った。 「落雷、、、?」 、、、そうか、 あの音とオレンジの光、あれ、、、 落ちた雷だったのか、、、。
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