柏木さんと俺は付き合ってなんかいません!

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─── その後は大変だった。 俺の退院予定はあっさり一週間延び、検査検査の毎日。 担当の先生は俺と両親に、 『落雷によるショックで記憶の一部が抜け落ちたのでしょう。 脳の機能というのはとても複雑ですから、 こういったことは珍しいことではありません。 退院後も当分は自宅で経過を観てください』 と伝えた。 俺にしてみれば、変な模様が身体に残った以外には特に異常ないと思ってる。 日常生活の認知機能だってすこぶる正常。 だけに、 入院中、 『柏木さんと俺が同棲(・・)状態』 だなんて聞かされても、すぐには信じられない。 「同居(・・)してるってのは認めるよ? けどそれは元々の居候先である亮介さんとユキさんの生活に気兼ねしてた俺を見かねて(・・・・・・・・・・・・)、バイト先のバーで知り合った柏木さんが親切に部屋を貸してくれたから。じゃないか」 この数日間、幾度となく繰り返したセリフを、俺は うんざりしながら退院当日の今朝もまた口にしていた。 心配そうに顔を見合わせる両親と、 静かに俺を見つめる柏木さん、病室に揃ったいつもの(・・・・)面々を尻目に俺は荷物を(まと)め、頭を振った。 「確かに柏木さんとの距離は近かったと思う。すごーく優しい人だから俺もつい甘えちゃってたし。 けどさ、、、」 この俺が柏木さんと、 つまり大手製薬会社の社長と付き合うなんてあり得ない。 どう考えたって釣り合い(・・・・)が取れないだろ。 混乱の行き場を失くして頬を膨らます俺を見た水無月さんは、半ば呆れた顔で柏木さんを顎でしゃくった。 「こいつに生活の全部を面倒見させてた お前が言うかよ、それ」 いや、、、それはマジでそう思う。 「ほんとに。 俺、どうかしてました。 『うちに住むか?』なぁんて柏木さんの社交辞令を間に受けるなんて。 、、、すみませんでした」 家賃なしの三食付きタワマン生活に食いついて、厚かましく転がり込んでた自分が今さらながら恥ずかしい。
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