罪なき青天

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「父さんは認めないぞ」 ─── ゴールデンウィーク入りの朝、爽やかな風が吹き込む我が家の客間では、父親が腕を組んで首を振る。 父親の横には母さん、(けやき)の和テーブルを挟んで対面しているのは俺と柏木さん。 この状況について─── 何から話せば良いのかってとこだけど、 つまり、 大学に合格して亮介さん家に居候してた俺は、柏木さんと出会い、付き合うようになってから彼のところへ移っちゃったわけで、 柏木さんも亮介さんも俺が引っ越したってことは当然両親に伝えてるものだと思っていたらしく、つい先日兄貴の法要が実家であった際、亮介さんがそのあたりの事を両親に話してしまった。 で、 話を聞いた親父が、 『どういうことか説明しろ』 と騒いできての顔合わせ。 ─── 「何が駄目なんだよ」 俺が知る限り、人の個性に対する間口が広く、温厚を絵に描いたような父親がこんな風に主張するなんて正直意外だった。 「お前はな、庶民も庶民。 しがない薬屋の息子なんだぞ。 こんな大層な方と将来パートナーになりたい? 生活の格差を考えてみろ、世の中には釣り合いって言葉があるだろ」 「あら、わたしは柏木さんの立場とかは関係なく賛成よ。 、、、洋一が亡くなった今、汰ちゃんを やっちゃうのは寂しいけど」 それにしてもまず俺が驚いたのは、柏木さんを紹介するにあたって、何よりも 『彼女(・・)』でなく『彼氏(・・)』を連れて来たことを突っ込まれると構えていたのに、 「親父(おやじ)の駄目っての、そこかよ。母さんも」 相手の性別は完全スルーだったこと。 格差だの、寂しいって方が問題か? 第一『やっちゃう』って何だよ、犬や猫の仔じゃあるまいし。 「『貰う』という意識はありません。 それに今日伺ったのは交際を認めて欲しいというお願いではなく、どちらかと言うと 『一生彼と共に暮らします』ということを宣言しに来たんです」 「柏木さんてば~」 横に座ってからずっと俺と手を繋いでくれてる柏木さんは、俺を見てにこっと笑った。 俺もへらへら。 付き合いに反対する親父を前にしても全くブレないこの男っぷり。 自信ある堂々とした姿に俺は不安のいっこもない。
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