399人が本棚に入れています
本棚に追加
「汰士を連れて帰ります」
「でも、、、ご迷惑だわ。
こんな状態の息子をお任せするのは」
「もうっ、俺は大丈夫だって!
大学もあるし、勉強に必要なものも全部置いてるし。
これまで柏木さんには随分甘えてたけど、
戻ってからは誤解されないように、ちゃんとするから。
バイトもして、身の丈に合ったアパート借りて自立する」
聞いてるのか聞いてないのか、母親が荷物を取り上げた。
「とにかく今日のところはうちに帰りましょ。ね、汰ちゃん」
「柏木さんとこに戻るって言ってるだろ?」
「でも」
「彼の意思を尊重してやって下さい。
記憶障害にしても生活の拠点を見せて説明してやらないと納得しないでしょうし、症状自体は一時的なものかも知れません。
汰士、、、今は無理に認めなくてもいいからな。
二人きりになって、ゆっくり確かめよう」
母親が手にしていた荷物を柏木さんが優しく取り返して言った。
顔を見合わせる両親を割って、俺の前に
ずいっと出たのは結城さんだった。
「チビ、俺んとこ来いよ。
お前が柏木との関係に納得しないまま
戻っても面倒なことになるだけじゃねーの?
それにお前はISPの一員になるんだろ?
俺がサポートしてやるよ」
「そうなのか?」
柏木さんの目が驚きに開いた。
最初のコメントを投稿しよう!