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マンションに戻る車中、俺は柏木さん相手に、
『記憶の確かめ』みたいなことをした。
合致してたのはプレジールで知り合ったこと。
酔っぱらった俺を保護してくれて、
兄貴の死に疑問のあった俺の相談にも乗ってもらったこと。
一緒に『すき焼き』も食べたし、イケズなユキさんに閉め出された時も泊めてもらったこと、
ストーカーに監禁されてた俺を助けに来てくれたこともしっかり覚えてたし、柏木さんもその通りだと答えた。
信号待ちに差し掛かり、柏木さんはハンドルに両腕を乗せて前を見据えた。
「おかしいな。
何故、僕との恋愛要素を含む行為だけが
すっぽり抜けたんだろう。
、、、一つベッドに寝ていたことは認めてる?」
「、、、はぃ」
確かに寝てた。
だけど単に寝たというだけ。
それ以外に何かがあったという記憶はない。
「そうか、なら今夜一緒に寝ればわかるかも知れないな」
柏木さんの目元がまた緩む。
まてよ、、、。
もし柏木さんと恋愛関係にあったというのが事実なら、
「あの、まさか俺たち、、、」
「セックスか?
してたよ、ほぼ毎日な。
さっき付け足すの忘れてたけど、汰士が監禁されてた場所でも犯人に見せつけ、、、」
「あ、いいです、いいです。
それ以上言わないで下さい」
人前でもヤったって言うのか?
─ 嘘だろ、、、
段々と自分までが信じられなくなってきた俺は初めてここで不安になった。
なのに、、、
ふと横でハンドルを握る整った横顔を見つめ、その気配に気づいた柏木さんと目が合って慌てて前を向いた。
「そんな顔する汰士も可愛いな」
なんで愉しそうに笑うんだ?
この人は。
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