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「柏木さん、、、俺のこと、その、、、」
『本気で好きなんですか』
なんて聞くの、今さらヘンだよな。
「本気で好きかって聞こうとしたのか?」
「ぁ、、はい」
言いたいことは何でもわかるみたいだ。
「そうだな、、、
『好き』とか『愛している』の定義が僕の感覚と一致してるかどうかはわからない。
けど、汰士そのものが、、、」
長くて綺麗な指が男らしくて品の良い顎に触れ、それから きちんとセットされた髪を無造作に掻き上げた。
「存在が、なんて雑把な表現でなく、身体はもとより髪一本、爪の先までもが僕にとっては『奇跡』だと思ってるんだ。
、、、大げさでなく本気でそう思っている」
光に当たって茶色く変化する柏木さんの瞳には、気取りや造り物めいた小賢しさは見当たらなかった。
「その『奇跡』が僕を見て笑い、語りかけ、泣いたり怒ったり、、、。
汰士が目を閉じて眠っていても、そっぽを向いていても、視界にいてくれるだけで幸福感で満たされる。
それは『愛』で合ってるのか?」
笑いながら俺に訊いた。
「褒め過ぎ、、、です。
そんな風に言われたら、調子ん乗っちゃいますし、俺」
けど、こんなスゴい人にそこまで言われれば、まんざらでもない。
「いや、人に言わせれば僕の汰士への執着は異常らしいから それなりに大変だと思う。
その分、日常に於いては紳士であること、汰士の幸せを第一に追求することで理解してもらうしかないんだが」
車の列が詰まり、一旦停車したところで柏木さんは俺の顎をくいっと取って自分と向き合わせた。
冷たそうにも見えるのに、実際は熱を帯びた眼と指。
「汰士が拒まない限り、僕はこれまでの関係を変えずに維持させるつもりだ」
静かな微笑だったけど、迂闊に『はい』と言えば、忽ちそれは重石になってしまうような圧だった。
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