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柏木さんは嫌いじゃない。
俺に対する態度も発する言葉も独特だけど、そこには ぶれない真実味があって魅力と言えば魅力。
しかも、
根拠なんてないけど、この人には若干S味があるとか、変態じみた一面があるってことを知ってる自分がいて、それでも
『柏木さんなら生理的にも受け入れられそう』
なんて。
そう思えるってことは、そういう関係があったって証拠になるんじゃないか?
いや、でもだからって、早々キスとかセッ、、、とかは、、、。
「かっ、柏木さんの気持ちもわかりますけど、や、やっぱり部屋に戻って確かめてみないと」
「あはは、、、。
ごめんごめん、追い込み過ぎた。
汰士の意思を尊重しないとな」
車が動き出して柏木さんは再びシートに背を着けた。
少し、ほんの少しだけ助手席側に身体を向けて。
柏木さんの癖なら知ってる。
俺を横に乗せてくれる時はいつもそうして、たわいのない話をしてたんだ。
しばらくして、柏木さんは
ふっと笑って首を振った。
「どうしたんですか?」
「自制はしてるんだが、久しぶりに汰士に触れてスイッチが入った。
嫌でなければ、、、もう少し触わらせてくれないか」
「へ、、、?」
『もう少し』ってどのくらいだ?
とは思うものの、それくらいのことを
頼まれて嫌なんて言えない。
ま、今は車ん中だし『もう少し』ならと、
「ど、どうぞ、、、」
やや緊張しながらも答えた。
すっと伸ばされてきた柏木さんの手は
ゆっくりと俺の髪に触れ、次に指の背で頬を撫でた。
前を見て運転してるのに、触り方が的確すぎて驚く。
頬を降りた左手はするすると腕を伝い、膝の上に置いた俺の手をとらえて握った。
そのまま引き寄せられて柏木さんの唇に、、、
「あの、、、っ」
思わず振りほどいた俺は、握られていた手を窓際に逃がしてしまった。
「本当に僕と恋愛してた記憶だけが
ないんだな」
「いえ、あの、すっ、すいません。
、、、びっくりして」
「悪かったのはこっちだ。
今までのつもりでつい、、、」
大きな手は ゆっくりとハンドルに戻される。
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