柏木さんと俺は付き合ってなんかいません!

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「おいで」 エレベーターに乗り込むなり柏木さんは俺の手を取って繋ぎ、側へ引き寄せようとする。 「、、、えっ、、、と」 柏木さんてば、 いきなり、いちゃつきモードに入ろうとしてるのかな。 「警戒してるのか、、、 それとも何か不安でも?」 警戒に不安? そりゃありありだろ。 俺は迫る柏木さんから少しでも距離を取ろうと手を繋いだまま、エレベーターの内壁に背中をつけながら薄笑いで少しずつ離れた。 避けられてるのを感じてるはずの柏木さんは、 「手を繋ぎなから部屋まで。いつも通り」 冷静そのもので手を引き、目を閉じる。 「は、、、は、、、はぃ、ぃぃ」 裏返る声が恥ずかしい。 柏木さんのさらさらした大きな手に、湿った俺の手がぴたりとくっつく。 ── 本当に、本当にこんな風だったのか?  俺たち、、、 確かにここは俺が毎日世話になっていたタワマンで野々山さんも柏木さんもドアの向こうの部屋も家具の位置も全て見慣れているものだ。 おかしなところは何もない。 なのに何だろ、この物凄い『違和感』。 玄関を過ぎると後ろから柏木さんが声をかけた。 「部屋に入って感じたことを言ってごらん」 先に数ある部屋の一室に入った俺は室内を見回した。 中の作り一つでも記憶と違ってたら、正直すぐ実家帰ろうって思っていた。 けど、 亮介さんとこから移ってすぐに用意してもらった勉強部屋、家具の配置、持ち物に生活用品全てに変わりはなかった。 リビングも二人で寝ていたという寝室も。 そして匂いも、、、 そうだ、このピリリとしたハーブのような匂いは柏木さんのものだ。 俺は振り返り、 「間違いなくここは柏木さんと、、、 俺の家です」 間をあけて後からついてくる柏木さんに頷いた。 正確に言えば 『俺が間借りしている柏木さんの家』ってことだけど。 「じゃ、互いの核心に迫ろうか」 寝室に入り、荷物を下ろした柏木さんがベッドの横に立って俺を呼んだ。 核心、、、 互いの核心、、、とは。
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