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けど、もちろん柏木さんだってここへ来る途中、
『僕が男だってことよりも、生い立ちの方が障壁かな。
初対面からすんなり歓迎されるとは思ってないよ』
って言ってたくらいだから、一通りの経歴を話した後、
「僕の育った環境は一般的な家庭のそれとは違います。
犯罪者の子である以上、一緒にいる彼にも何らかの迷惑を掛ける可能性はあります」
「それは関係ないよ、柏木さん」
「そうよ。
真っ先に、しかも包み隠さずお話してくださって、こっちは誠意を感じたくらいだわ」
「汰士との付き合いを反対される理由が本当に地位や収入面の『格差』であるのならば、それは『今は』というだけの不確かなものです。
もしも再びメディアに曝されるようなことがありましたら現在の立場も収入も一瞬で消えるかも知れませんから」
「だから柏木さんはわざわざ実力主義の外資系企業を選んだんだんだろ?
いや、もし万が一何かあったとしてもだよ?
この俺が何とかするし」
「働いてもない学生のお前が言えることではないだろ」
「、、、そうだけど。
そ、その心構えはあるってことだよっ」
「お前が世話になってるという、あのタワーマンション。
家賃いくらするのか わかってるのか?
何とかという飲み屋でのバイトはどうなっているんだ?」
「飲み屋じゃなくて『オーセンティックバー』!
格式のある ちゃんとした店だよ」
「今も働いているのか?」
今日に限って鋭いな、親父。
「事情があって、、、辞めた」
俺は声を小さくして下を向いた。
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