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その時、開け放たれた縁側の垣根越しに、
キキッという車のブレーキ音に続いて、キキーッという、これまた急ブレーキのタイヤ音がし、二台の黒い車が停まったのが見えた。
すぐにバタン、バタンとドアの閉まる音、それからほどなくして、忙しなくインターホンが鳴らされ、母親が立ったところで玄関からドヤドヤと数人の足音がなだれ込んできた。
「はいはい、どなた、、、」
「いました、いましたっ。ここですっ!」
襖が開くなり突然飛び込んできたキセくんを見、母親はまるで展示物でも見るように膝を少し折って目線を合わせた。
「あら可愛い」
「リーダー発見なのですっ」
くいっと身体を横に曲げて部屋の奥を覗き、俺の横にいる柏木さんを指差すキセくん。
丸い頭が振り返るその後ろからは元刑事の水無月さんが、
『ったく、時間がねぇっつーのに』とか
『手間かけさせやがって』とか、乱暴な言葉を舌打ちで挟みながら居間に入ってきた。
今度は背の高い水無月さんと出会い頭になって一歩下がった母親は、
「まぁ素敵」
開けた口に手をあて見上げている。
水無月さんは母親をギロリと一瞥しつつも、その割には丁寧に脇へ退け、
『すみません』と一言告げた後、俺たちに向かって、
「こんなとこで何してんだ」
地響きのような声を轟かせた。
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