罪なき青天

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もうこの時点で嫌な予感しかしない。 「そっちこそ何事だ? 僕は今日、終日オフになっているはずだが?」 見上げる柏木さんに、 「ぁ"あ? 俺らに休みなんかあるわけねぇだろ」 口どころか機嫌も超悪い水無月さんはテーブルの脇に仁王立ちして俺達を睨み下ろした。 「トランプ (隠語:ISPが現在調査中の臓器売買組織)の ボックス(人員・メンバーの拠点)を押さえたんだよ」 「本当か?」 毎度のことながら俺には内容も分からないやり取りだ。 けど、冷静な柏木さんが いきなり腰を浮かせたあたり、かなり重要なことなんだろう。 「このクッソ大事な時にスマホの電源まで切りやがって」 明らかに苛ついている水無月さんの後ろから顔を出したキセくんも挑戦的な目元をして、前髪を振り払った。 「柏木リーダーのスマホには電源オフでも 追跡できる機能を搭載させてあります。 逃げてもムダですよ」 「今日はこちらにいらっしゃる汰士のご両親にご挨拶する大事な日でね」 柏木さんが笑って目の前に出されていた茶饅頭をキセくんに向かって差し伸べると、途端に前に躍り出て『頂きます』と言って受け取り、側に座って食べ始めた。 「挨拶ならもう済んだろ。 今から奴らの拠点(ボックス)にキセを潜入させる。 お前は俺と援護に回ってくれ」 即座に背中を向けて部屋を出ようとする水無月さんに対し、 「いや」 柏木さんは静かに答える。 「、、、は?」 ゆっくりと振り返る水無月さんのこめかみからはピキリという血管の浮く音が聞こえるようだ。 「『いや』だと?」 あ、なんかヤバい。
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