罪なき青天

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「かっ、柏木さん、大事な用事なんでしょ? ここはもういいから仕事に行ってよ」 水無月さんの凄味(すごみ)を受けても柏木さんは、 「そういうわけにはいかない。 ご両親とはもう少し話をしないと」 真剣な面持ちで親父を見据え直している。 「優先順位間違えるなよ? お前リーダーだろ」 じりじりとにじり寄る水無月さん。 そこへ、 「失礼しまーす」 白い袋を下げて ゆらゆらと入り込んできたのは、 「結城さんっ」 長身のモデル男、結城さんだ。 「あらー。 次から次へと色の違う超イケメンばかり」 母親は頬に両手をあてて柏木さんと水無月さん、それに、結城さんを順に見比べている。 この面々が揃った時点ですでに嫌な予感もくそもない。 勿論これは何かの始まりだ。 「よう、チビ。元気でやってるか」 ニヤッと俺に笑いかけた結城さんは部屋内を一巡し、母親に目を留めると手にしてた袋を差し出した。 「あ、これ。 隣の店で買ったんですけど」 揺れる袋にはオレンジ色の玉が透けて見えている。 「、、、まぁ、お隣の山田フルーツ店の夏みかん?」 我にかえった母親は結城さんと袋の中を交互に見、再び結城さんを見上げた。 「車から降りた時ちょうど目に入って。 、、、旨そうだったんで」 「ほんと、、、イケメンで美味しそ、、、 あ、いえ、、、今は旬だものねぇ。 せっかくだから皆で頂きましょうか。 、、、えっと」 「結城(ゆうき) (たける)です」 言いながら結城さんは母親ではなく、 何故か俺を見ながら(・・・・・・・・・)自己紹介した。
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