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帰り道
誕生日に父がくれたのは、
赤いリボンのかかったプレゼントだった。
歩く度にカタカタと音のする箱は
私をワクワクさせた。
駅から30分も歩いてると、
寒い季節でも汗ばんでくる。
手袋をはずそうと、指先を動かしていたら
プレゼントは抱えていた腕から滑り落ちた。
カチャカチャ
カランカラン
転がって地面に落ちた箱から、こんな声が聞こえた。
「来週は部活があるから」
「この前のケーキおいしかったよ」
「お父さんっていつまで家にいる?」
「なんか最近、見てるだけでむかつくんだよね。」
友達に言った愚痴や、内心思ってたことが音となって箱からこぼれ落ちたようだ。
何で知ってるの?
仕事でいなかったはずなのに、学校で話したことなんてわかるわけもないのにと動悸がしてきた。
「言葉には気をつけなさい。」
といつも言ってた父親を思い出した。
私は父から逃れられないのだろうか。
赤いリボンのついた箱を拾わず
私は駅へ戻ることにした。
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