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落とし物からの考察 その2 「見つけました」
少し歩いたところで、見つけました。スーツ姿の免許証の顔を。
その人は俯きながらキョロキョロと何かを探している感じ。
お探し物は完全にコレでしょ。
今、私の手の中に握られている黒革の長財布。
だから急いで声をかけました。すれ違いざまに
「もしかしてお財布、お探しですか?」
って。
え、ってなってましたよ。え、って。
そりゃ、見ず知らずの中年女に、そんな風に声かけられたら驚くわな。私だって別に援助目的で声をかけたわけじゃないし、そもそも、私にそんな財力はない(キッパリ)。
でも実際にお財布を探してたわけですから
「は、はい……恐らくこの辺りで落としたと思うんですけど……」
免許証の証明写真より、とっつきやすい雰囲気ではあるが、真面目そうなその人は立ち止まって答えてくれました。
これ、余談なんですけど、免許証の写真って、どうしていつも写りが微妙になるんだろ。毎度、魂が抜けたような顔してる。なのに本人証明になるって、ちょっと複雑な気分。
と言うのは置いといて
私、拾ったお財布を、その人に差し出しまして
「落ちてましたよ、えーっと……綿敷、さん?」
中を開けて免許証を見てしまったことを謝罪しつつ、お財布を返したわけです。
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