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有里は後日、恒田に連絡をとった。
大まかな内容を話し、色々調べてもらった料金を支払う為に会う約束をした。
それは近くの喫茶店。
そこに恒田は来た。
相変わらず清潔さのない雰囲気。生活感が表れている。
「ほんとに、2万でいいのでしょうか?」
「かまわない。連絡先や情報だけだったからな。それより、あんた、本当にこれだけで良かったのか?」
恒田は逆に聞いてきた。心配しているのだろうか?
「いいの。もう仕方ないと思うことにしてる。夫婦だから……こういうことも受け入れてやっていくしかないと思うの。」
そういうと恒田はふっと笑った。
「あんた、珍しいタイプの女だな。」
そうなのかもしれない。
普通ならば慰謝料をとったりもっと泣きわめいたりするのかもしれない。
けれどそんなことをしてなんになるのか?
過去を変えられるのだろうか?
朔は泣きながら行為の最中に何度も言った。
愛してると。
終わったあとも言った。
有里になにかあったら必ず命に変えてまもると。
もうそれだけでよかった。
あの時芽生えた殺意は……そっと心の中だけに閉まっておく。
そしてもうひとつ。
もしかしたら自分だって子供が出来るかもしれない。
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