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と、その瞬間、手に激しい痛みを感じたと同時に、僕の手にあった包丁が僕の手を離れた。
そして、パァン、という音が洞窟内に響いた。
僕は自分の手を見ると、そこから血が流れ出ていた。
なんだ、これ…?
「動くな!!」
すると男の声が洞窟に響いた。振り返ると、警官隊がそこに何人か立っていて、僕に銃を向けていた。
ああ、みつかった。
僕はそこで、負けたんだと悟った。
落胆していると、その警官隊が僕に勢いよく近づいてきて、乱暴に僕をレイアから引き離した。
これが、レイアが本当に望んだことなの?
レイアはこれでよかったの?
そんなこと、絶対にない。
きっとレイアはそのうち僕が恋しくなるに違いない。
僕と離れたことを、後悔するに違いない。
絶対にそうだ。絶対にそうなんだ。
乱暴に捕まえられ、地面にたたきつけられ、腕を拘束される中、肩をささえられながら外に連れ出されるレイアの後ろ姿が見えた。
僕のレイアに触るなよ。汚らわしい手で触るなよ。
僕の中にそんな怒りがふつふつと沸いてきた途端、僕は警官隊を押しやり、レイアを僕から遠ざけるその警官隊に向かって突進した。
「レイアから離れろ!!」
僕は必死だった。
「おとなしくしろ!!」
二度目の暴力と、乱暴な言葉で、警官隊は僕を傷つけた。
「レイアを傷つけるな!!僕がレイアを守るんだ!!!僕からレイアを奪うな!!!」
僕は声を荒げた。
やっぱり、負けたことを認めたくなかった。
レイアから離されたくなかった。
でも、僕の声は届かずに、レイアは僕から離されてしまった。レイアは僕を一度も見なかった。
レイアだって、本当はいやなんだよね。僕から離れるのが、いやなんだよね。
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