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そして、ある考えが頭をよぎった。
この包丁で、2人ともあの世に行けば、僕はいつまでもレイアのそばにいることが出来る。
そしていつまでも、レイアを守ることが出来る。
それは僕にとって、レイアにとって、一番いいのではないのか。
そう思った時、僕の手は包丁に伸びていた。
ベルトにはさんでいた包丁を手に取り、レイアの方を見た。
レイアは呆然としていた。
「レイア」
僕はレイアの名前を呼んだ。
そして、空いた手でレイアの頬に触れた。
気温も低く、頬は氷みたいに冷たかったものの、その肌は変わらず白く、透き通っていて、この逃亡生活においても、その美しさは変わらなかった。
目は大きく、でも優しい目つきで、髪は柔らかく、綺麗だった。
こんなにも美しい人に、こんな生活をこれ以上強いるのもだめだろうと、僕は意を決した。
頬に触れた手を、そのまま肩に下ろし、そして力を入れて、その場にレイアを押し倒した。
レイアは声を上げ、怯えた表情で涙を浮かべた。
「ごめんな、レイア。でも、こうするしかないんだ。レイアのためなんだ。」
そして僕はその包丁を振り上げた。
「やめてください!」
するとレイアは、今までで一番大きな声でそう叫び、全力で僕に抵抗した。暴れるレイアを僕は必死に押さえようとする。
「信じてよ、レイア。これがレイアの幸せのためなんだ。
これでレイアはずっと僕と一緒にいられるんだよ?
僕はずっとレイアを守れるんだよ?
レイアだって、その方がいいでしょ?」
もはや僕の言葉はレイアには届いていないように、レイアは体をばたつかせた。そしてそのうちの脚が僕の体に命中し、僕はひるんでしまった。その隙に、レイアは洞窟の奥に逃げようとした。
そんなレイアの足を掴み、逃がすまいとレイアを押さえた。
「怖いの?レイア。大丈夫だよ。一瞬で楽にしてあげるから。
大丈夫。僕を信じて、レイア。」
ただ死ぬことが怖いんだろうと思って、僕は暴れるレイアを押さえながらできる限りの優しい声でそう言った。このままでは、レイアの体を傷つけてしまいそうだった。
「暴れないでよ、レイア。僕にレイアを傷つけさせないでよ。」
僕はレイアを押さえるのに必死だった。
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