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赤い空を見た事がある。 夕焼けの空だけれど、あの強いオレンジではなくて、本当に、真っ赤な空。 中学生になる直前、少年時代が終わろうとしている日の何処かに、あの赤の記憶が眠っている。空にあった筈の太陽のイメージすら朧げになっても、その色だけは消える事は無かった。 友達を苛立たせた時。部活で大きな失敗をしてしまった時。面倒事から逃げた結果、人を深く傷つけた時。 そういった日の帰り道、目の前にあの赤が現れることがあった。 その色は記憶のまま、変わる事なくあまりに熱く、僕の罪悪感を焦がして、真っ黒に塗りつぶしていった。 そうした日々から何年も経ち、僕はいまだにちゃんと生きられないでいる。 この頃、あの色に消してもらった感情は、僕が生きていくために必要なものだったんじゃないか、と思い始めた。 今の自分の傷を覆い、子供の自分をフラッシュバックさせる赤のイメージ。 僕はそれに頼り続け、幼い頃の心のままでここまで来てしまった。 今でも、あの赤を見る。 そんな時は目を閉じ、頭を振り、身体から遠ざける。 残った傷をじっと見つめ、明日に備える。 それを繰り返す。 痛みと共に生きることを、皆は昔から耐え続けているのだろうか。 僕の赤が消える時、僕もそんな風になれるだろうか。
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