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お紅
愛とか、幸せとか、そんな抽象的なもので己の人生を満たせるなら、いくらでも口にすればいい。
そうすれば、いつかあんたの脳はその偽りを真と錯覚して、おめでたい人生が完成するから。
「私もいつか愛されて幸せになりたい。」と口走る人に対して、いつしかそんなことを思い始めた。
目の前の全てが偽りで、本当はどいつもこいつも自分の欲求を、生物的な欲求を満たすためだけに生きてるんだと思ったその日から、私の周りの全てが色を失った。
実をいうと、そうなったのは結構早かった。
私を作った女も、その相手も、その他の人間も、どいつもこいつも汚れてる。
そして、私自身も。
そうしないと、生きていけないから。仕方なく、汚れている。
洗っても洗っても落ちないその汚れは、私の未来も黒くしていく。綺麗になれる日はきっと来ない。このまま死んでいくんだと、そう思っている。
そして今日も、自分を癒やしに来た男たちが、妓楼に足を運んだ。この場所の本当の姿を知っているのかいないのか、男共は全員、ここを大いに楽しんでいる。
ここは娯楽の場所として賑わいを見せている。が、実際は社会の陰にある場所だ。ここで働く女たちの多くは親に売られた身であり、そして私もまた、その一人である。
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