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そしてある日の夜。
いつものように町外れに行ったが、その日は少し遅くなってしまい、雨の中暗い夕方の道を、私は傘を差して急いでいた。
仕事に間に合うことだけを祈りながら必死に歩いていると、目の前を数人の人影が現れた。いつも話しかけてくる男ではなさそうだということは、体格や人の数で察した。
「あの、何かご用でしょうか?急いでいるのですが。」
私は立ちふさがるその四人に言った。
「お嬢ちゃん、こんな夜にどうしたの?一人でこんなとこ歩いてたら危ないよ?」
そのうちの一人が言う。
「お気遣い、ありがとうございます。私は大丈夫ですので、通していただけませんか?」
私が丁寧に言うと、その人影が笑いながら近づいて来た。
「本当かなぁ?」
思わず後ずさりすると、後ろから誰かが私の右肩を掴んだのを感じた。
しまった。
私を囲むそれらはタチの悪い浪士か、人身売買の輩だろう。
少し焦った私だが、正直ここで捕まって売られたとしても、私的には何の問題もないことに、すぐに気がついた。このまま抵抗して、身を危険にさらすくらいなら、大人しくしていた方がいいかもしれない。
そう思い、私はそれ以上もがくのをやめた。
と、前にいた男が目の前まで来て、私の頬を片手の指で挟んだ。
「ほう、なかなか上等じゃねぇか。」
暗闇にぼんやり浮かぶひげ面の男は感心したように言う。
「兄貴、そいつたしか妓楼の女ですぜ?」
と、別の男の声がした。
「じゃあ、遊ぶのも上手いのか?試してやるか。」
ひげ面の男がそう言ったかと思うと、次に私の傘を奪い、それを放って、そして私を小道の端に押し倒した。
ああ、また金にもならないことを。
金もない浪士が。汚れが。
無駄な欲晴らしだと気づいた私は、そう心で罵りながら必死に抵抗しようとした。
が、相手は元侍なのか、力も強く、ただ遊びに使われてきた私何かが叶うはずがなかった。
こんなことになるならもっと早く逃げていたのに。
そう後悔しても遅いだろう。
遊女である身なのにも関わらず、こんなことに使われる虚しさで一杯になり、私は諦めそうになっていた。
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